アジャイル・アーキテクチャーはビジネスケースを構成する

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アジャイルでは、様々なことが不透明な中スタートする。そして、徐々に、徐々に具体化していく。
不透明な中、アイデアを、作りながら、チェックしながら、少しずつカタチにしていく進め方である。
先が見通せない中、確度の高いものから作っていくアプローチは理にかなったことだが、無計画になんとなく初めてよい訳ではない。

物事を行う時、なんらかの動機があるはずだ。組織であれば経営戦略に沿った目標だろう。それを実現するために、製品やサービスを世に送り出す訳である。

不透明な状況でも、何をどこまで作るのかは最初に考えるはずだ。あるべき姿をイメージし、現状を踏まえ、ギャップを埋めるために、実装戦略を練るはずだ。
そして、最終的なゴールを支えるために、そこまでのロードマップを描き、基盤となるインフラを設計するだろう。

アジャイル方式で徐々に作り込んでいく時、状況に応じて軌道修正を重ねていくが、だからと言ってプロダクトが全く別のものにすり替わる訳ではない。
あらゆる投資にはビジネスケースが必要で、全く別のものを作ると、前提となるビジネスケースが根幹から崩れてしまう。

トラックの構造からフェラーリは生まれない。
トラックをどんなに進化していっても、フェラーリにはならない。本質的に構造が異なるからだ。

同じトラックでも、途中で変更して、中型トラックから小型トラックならできるが、大型トラックやダンブカーへの変更はできない。
中型トラックは積載量4トンだから、小型トラックの2トンの積載量は問題ない。
だが、大型トラックは10トンだから、基盤もタイヤも違う。求められる構造が違うのである。

かつてクライアントとアジャイルの話をしていた時、「アジャイルなら何でもできるだろう?」と質問されたことがある。
「2階建ての戸建てを作り始めて、途中で50階建ての高層ビルにしたい場合も、アジャイルならできるよね?」と。。

アジャイルは銀の弾丸ではない。アジャイルはもの作りの手法に過ぎない。ビジネスケースの変更を支えるものではない。

先の例では、求められる基盤が全く異なる。
戸建てなら、支える基盤構築に1~2メートル掘ればいい。高層ビルなら25メートル以上掘らないといけない。地層によっては50~60メートル掘るケースもある。

作る方法がアジャイルだろうが従来型(ウォーターフォール)であろうが、最終形は関係者で握っておこう。
小さく初めて、やがて大きくしていくのがアジャイルだが、最終的にどこまで増強していくのか、合意形成しておくべきだ。

トラックの構造からフェラーリは生まれない。
2階の戸建て構造で、ブルジュ・ハリファは建たない。

「アーキテクチャーも徐々に見えてくる」と説くアジャイリストもいるが、アーキテクチャーはビジョンと同じく、プロダクト構想の初期段階で検討されるべきだ。

プロダクトマネジメントの要諦は、ディスカバリーフェーズ(方向付けの段階)で、プロダクトの最終イメージを関係者全員で共有しておくことである。
最終形を握った上で、実現するために必要な機能・品質要件を考慮し、アーキテクチャを設計する。
基盤ができたら、プロダクトをインクリメンタルに成長させていけばいい。

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