英国プロジェクトマネジメントPrince2で登場する役割を紹介しよう。
まずは英語で。
- Project Executive
- Senior User
- Senior Supplier
- Project Assurance
- Change Authority
- Project Manager
- Team Manager
- Project Support
- Team Members
次に日本語で。
- プロジェクトエグゼクティブ
- シニアユーザー
- シニアサプライヤー
- プロジェクト保証
- 変更許可委員
- プロジェクトマネージャー
- チームマネージャー
- プロジェクト支援
- チームメンバー
更に、プリンスの品質のテーマでは以下の4つの役割も登場する。
- Chair 成果物のレビュー会を開催する人。レビュー会の主催者であり進行役
- Presenter 成果物を提出する人。成果物の作者
- Reviewers 成果物を検査する人
- Administrator 成果物の検査結果や必要な追跡アクションを記録する人。主催者を支援する
又、アジャイル版プリンスでは、以下の役割も登場する。
- Customer Subject Matter Expert: ドメインエキスパート。チームに所属
- Supplier Subject Matter Expert: テクニカルエキスパート。チームに所属
- Customer Representative: 顧客や利用者側の代表。必要な局面で動的にプロジェクトに参加。実装チームに加え、プロジェクト委員会のシニアユーザーへのアドバイザリーを行うケースもある
Supplier Representative: サプライヤー側の代表。必要な局面で動的にプロジェクトに参画。主にサプライヤーSMEを支援 - Quality Assurance: 品質保証。ユーザー対象のQAとサプライヤー対象のQAが別々にいるケースもある。プロジェクトチームに所属するケースと、プロジェクトの外からチェックするケースがある
- Coach: アジャイルコーチ。チームメンバーとしてチーム固定のケースもあれば、複数のチームにまたがってコーチングするケースもある。チーム固定の場合、チームマネージャーがコーチを兼務する事が多い
そして、最上位には組織内の全てのプロジェクトを監督する機能がある。
- Corporate,Programme Management or the Customer
「コーポレート・プログラムマネジメントまたは顧客」である。
この下に、先のプロジェクトエグゼクティブ以下が収まる。
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プロジェクトエグゼクティブ、シニアユーザーそしてシニアサプライヤーでプロジェクト委員会を形成する。プロジェクトのあらゆる判断と決定は、プロジェクト委員会で行われる。
プロジェクト委員会で正しい判断と決定がなされるために、PMは正確な情報をタイムリーに報告する義務がある。そして、プロジェクト委員会も迅速に決定し、プロジェクトを円滑に指揮する。
組織によって、プロジェクト委員会は役員で構成されることもある。役員でなくとも、通常忙しい人達だから、タイムリーに判断を下して指示することが難しい事もある。
そんな場合、プロジェクト委員会は自分達の役割をサポートしてくれる「プロジェクト保証」を任命することができる。
プロジェクト保証はプロジェクト委員会とプロジェクトマネージャーの間に入り、プロジェクト委員会に代わりPMやチームマネージャーに対して、助言したりサポートしたりする。
プロジェクト保証を設けることで、プロジェクト委員会は負担を軽減できる。そして、PMやチームマネージャーにとっても、非公式な相談事をプロジェクト保証にした上で、公式な提案をプロジェクト委員会に持って行ける利点もある。
プロジェクト保証はオプショナルである。設定するかしないかはプロジェクト委員会の判断だ。プロジェクト委員会には3つの役割があるから、プロジェクト保証も3つの役割に分かれている。
プロジェクト保証の3役割:
- ビジネス保証: エグゼクティブの負担を軽減する役割
- ユーザー保証: シニアユーザーの負担を軽減する役割
- サプライヤー保証: シニアサプライヤーの負担を軽減する役割
プロジェクト保証を立てても、プロジェクトの説明責任はプロジェクト委員会にある。だから、プロジェクト保証に丸投げは許されない。1番いいのはプロジェクト委員会自らが全ての判断と指示を行う事だ。
そもそもビジネスケースの所有者がプロジェクトエグゼクティブなのだから、自分がしたい事に時間を捻出できないという言い訳は受け入れられない。
プロジェクト保証はPMやチームとは独立している。アドバイザリーに特化しており、プロジェクトの実装部隊とは区別される。実働部隊に入ってしまうと、中立的な立場で保証ができないからだ。だから、PMやチームマネージャーがプロジェクト保証を兼務することはできない。
続いて、変更許可委員。
要求の変更や規格外項目の承認・非承認に特化した役割である。
こちらもプロジェクト委員会が任命する。「変更許可委員」の機能を設けるかどうかはプロジェクト委員会の判断だ。
通常、要求変更の発生頻度により判断する。
変更が頻繁に発生する場合、毎日のように判断するのが煩わしいこともある。特に小粒の変更の場合だ。そんな時、変更許可委員を設ける。あらかじめ、限度額を設けておき、変更許可委員が承認できる金額を決めておく。
例えば、一件の変更要求が10万円未満の場合、変更許可委員が承認できる。それを上回る場合、プロジェクト委員会に持ってくること。
これもプロジェクト委員会の負担を軽減しながら、タイムリーにプロジェクトの作業を進めていく仕組みである。
変更許可委員はPMも兼務可能だ。そして、変更許可委員を複数任命して、承認できる金額を複数設定することもできる。これらはプロジェクト委員会の判断である。
例えば、以下の要領である。
- 3万円未満の変更 → PM承認
- 10万円未満の変更 → 変更許可委員 Aさん
- 20万円未満の変更 → 変更許可委員 Bさん
- 30万円未満の変更 → 変更許可委員 Cさん
- 30万円以上の変更 → プロジェクト委員会
続いて、プロジェクトマネージャー。
このサイトをご覧の方で、PMを知らない人はいないだろうが、カンタンに説明しておこう。
PMはプロジェクトエグゼクティブ同様1名である。
一プロジェクトに一名で、プロジェクト委員会とチームの間の中枢を担う。ここが機能しないとプロジェクトが空中分解してしまうから大変重要な役割である。上級マネジメントとデリバリーチームとを結び付け、プロジェクト全体を有機的に噛み合わせ、プロジェクトゴールに向かって引っ張っていく求心力と人間力が求められる。
プロジェクトマネージャーは現場の責任者として、本段階でコミットした予算・時間・スコープに沿ってプロジェクトをコントロールする。更に定められた許容度から逸脱しそうな際には、直ちにプロジェクト委員会にエスカレーションする。
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続いて、チームマネージャー。
チームマネージャーはドメインエキスパートである。プロジェクトの成果物を作るのが仕事だ。
PMからワークパッケージを通して作業を受け取り、記載された仕様通りに成果物を仕上げる。
プロジェクトはエリア横断的なので、チームマネージャーは複数いる。利用者部門の担当者に加え、テクノロジー部門の担当者もいる。プロジェクトにアサインされた担当者の代表がチームマネージャー。それを支援するのがチームメンバーだ。
続いて、プロジェクト支援。
プロジェクト支援は大きなプロジェクトで設けることが多い。プロジェクト支援の作業は、ログや登録簿の管理、会議の招集や議事録の作成等補助的なものが多い。PMの役割責任だが、巨大プロジェクトになるとPMの負荷が増えるので、補助的な役割は切り出して、プロジェクト支援に任せる。
プロジェクト支援はPMに加え、チームマネージャーも支援する。チェックポイント報告書の収集だったり、チームにアサインされた課題の追跡等もプロジェクト支援が引き受ける。
米系企業で一般にプロジェクトコーディネーターと言われる役割と同じだ。
最期に注意点を2つ。
一つ目。
プリンスの役割と組織の役割を混同しないようにしよう。
例えば、プロジェクトマネージャーである。
組織のタイトルとしてプロジェクトマネージャーを使っているケースがある。大抵PMOやITに所属する専任PM達だ。
彼らは、その名の通り、プリンスプロジェクトでPMになることも多いのだが、いつもそうであるとは限らない。特定のドメインに詳しいPMであれば、チームマネージャーの役割を担うこともある。IT PMというタイトルの人が、そのままPMになることもあるし、ITのチームマネージャーになることもある。
協力会社の担当者の役職がPMであっても、プリンスプロジェクトではチームマネージャーということも多い(PMは社内の人間が務めるのが一般的だ)。
二つ目。
階級に関わらず、プロジェクトを仕切るのはPMである。
チームマネージャーが部長級であることもある。大きなプロジェクトでは部長がチームマネージャーを務め、チームメンバーにずらりと課長級が並ぶこともある。チームだけでプロジェクト組織になりそうなパターンだ。
更に、チームマネージャーとして参画してもらっている協力会社の担当者が役員級であることもある。その下に複数の部長、課長・・・・がいるパターンだ。
もしPMであるあなたより職位が上のメンバーがいても気後れする必要はない。
プリンスプロジェクトではチームマネージャーの管理者はPMである。あなたが彼らの管理者だ。
それだけ大きなプロジェクトを任されたことに誇りを持ち、遠慮せず仕事を全うしよう。
組織の役割とプロジェクトの役割が異なることも多いから、プロジェクト立上げ文書(PID)の中に、体制図と一緒に役割責任も明文化しておくとよい。
特に組織全体にプリンスが浸透していない場合は有効である。
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