アジャイルで!
agileで!
あじゃいるで!
最近は、アジャイルで開発することを指定するクライアントが急増している。
優れた製品やサービスを作り出すことより、アジャイルで作ること自体が目的化しているケースも多い。
短絡的に、アジャイルで進める=よい製品ができる、と考えてしまう傾向もあるのだろう。
そして、相反するように、従来型であるウォーターフォールでコンサルティングして欲しいという依頼はめっきり減った。
アジャイルは、確かに優れた開発手法だが、万能ではない。アジャイル向きの案件もあれば、そうでない案件もある。
今回は、アジャイルでは上手くない、ウォーターフォールの方が好ましいケースを見てみよう。
まず最初に、ウォーターフォールの特徴をおさらいしたい。
ウォーターフォールの大前提は、要求仕様は変わらないことである。
要求が変わらなければ変わらないほど、ウォーターフォールがはまる。
1年経っても、10年経っても、要求が1ミリも変わらないなら、ウォーターフォールを採用しない理由はないだろう。
ウォーターフォールのもう一つの特徴は、利用者フィードバックの獲得に消極的である点である。
ウォーターフォールでは、成果物はできあがってからユーザーに展開する。最終工程のユーザー受入テストで、念のため、チェックしてもらう。
ものは既にできあがっているから、完成品だ。前提として、完成品に対してフィードバックがあっても、それを受けて変更する事を想定していない。
最終受入テストの段階で、仕様変更が多発するのは、作り方を誤った結果だろう。アジャイルで進めるべきであったケースだ。
以上を踏まえ、私が考えるウォーターフォールに最適な案件は、これだ。
- 大量生産プロダクト
- 欠けていると価値のないプロダクト
- 変えてはいけないプロダクト
順番に説明しよう。
大量生産プロダクト
大量生産型製品の重要ポイントは均一であることだ。
成果物にバラツキがあってはならない。
成果物を均一にするには、作り方を均一にするのがいい。そして、材料も一度に仕入れて、一括で作るのがいい。
仕入れるタイミングが異なると、材料が微妙に異なることがある。
仕入れコストも変わるとやっかいだ。
だから、同じタイミングで、同じ仕入れ先から、大量に入手して、まとめて製造する。
高層ビルの各フロアは、ぴったり同じである。
ユニットフロア工法では、別の場所でフロアを作っておいて、後からビルに積み重ねていく建築方法をとる。18階だけ大きいとか、24階だけ床が薄いとかいうことがあってはならない。
ウォーターフォールの美学は一切変えないことだ。
- 何も足さない。
- 何も引かない。
- 何も変えない。
そのために、作り方も一貫して、変化を付けないことが重要になる。
ぴったり同じ成果物を作るには、毎回同じ手順で作るのが一番だ。
振り返って改善したり、作り方を変えてしまうのはリスクになる。
次に2点目。
欠けていると価値のないプロダクト
私がしばしばクライアントにお話する例は、以下である。
- トンネル工事
- 架け橋工事
- トランプや将棋の製造
「二八の法則」はアジャイル界隈で頻繁に耳にする言葉だが、2割だけでは価値をもたらさないものが世の中にある。
トンネルは穴が突き抜けないと、なんの意味もない。
架け橋も向こう側に掛からないと、なんの意味もない。
トランプや将棋もフルセット揃わないと、遊べない。
「王将」駒は製造中なので、先に試合を始めててください、では意味不明だ。
価値あるモノから作って「王将」駒だけあっても、毎回王将を動かすばかりだと埒があかない。
スコープ全量揃ってこそ、意味のあるプロダクトがある。
時間重視で、スコープ調整を強いるアジャイルは向かない。
3点目。
変えてはいけないプロダクト
典型例は、世界遺産や歴史的建造物の補修工事である。
世界遺産や歴史的建造物は、今の姿が一番美しい。そして今の姿だから価値がある。
改良して形を変えたりしたら大問題になる。
五重塔は五つの屋根が美しい。
それに、屋根にもちゃんと意味がある。下から、「地」、「水」、「火」、「風」、「空」である。
だから、追加して六重塔にしたり、現代のテクノロジーを駆使して10倍の高さの五十塔を建てては台無しだ。
傷んだところを、元の状態に復旧することが一番重要である。
だから、どこをどう直すかは、作業者が心得ている。最終形について観光客からフィードバックを獲得する必要がない。
風合いを変えてはいけないから、当時の製法をそのまま再現することも多い。
温度や湿度が作品に与える影響は計り知れないから、なるべく気温差の少ない季節に補修工事を行う。
木造建築を鉄の柱で補強したり、壁をコンクリートで塗り込んだら、世界遺産リストから抹消されてしまう。
今より、優れたモノを作ろうと意気込んではいけないのである。
元々の風合いがあるから、それを残す事がなにより重要だ。
プロダクトの備えたよさを、厳密に、再現すること。
だから、作り手が創造性を発揮し、ピカソの絵を描き直してはいけない。
繰り返しになるが。。
ウォーターフォールの美学は一切変えないことだ。
- 何も足さない。
- 何も引かない。
- 何も変えない。
そのために、作り方も一貫して、変化を付けないことが重要になる。
改善マインドや創造性は横に置いて、伝統的な手法を大切にして、一つ一つ丁寧に仕上げていく。
しっかり計画を立てて、定められたベストプラックティスに従い、均一の製品を作る。または、ムラのない仕上げを施す。
現代でも、ウォーターフォールは有効な手法である。
![]() |
新品価格 |