アジャイルは価値駆動型開発である。
顧客視点でバックログを優先順位付けし、価値の高いモノから実装していく。
そして、アジャイルはゴール駆動型開発でもある。
アジャイルのゴールは、顧客に価値を届けることだ。だから、同義である。
アジャイルは価値駆動型であり、且つ、ゴール駆動型である。
例を挙げて説明しよう。
スクラムでは、スプリントゴールを設ける。
スプリントゴールは、イテレーション毎に設定し、個々のスプリントで創造する顧客価値だ。
そして、スプリントゴールは、スプリント期間中、開発者が迷ったときの判断基準になる。
エンジニアは、スプリントのタスクをこなしていくが、タスクをこなす度に、スプリントのゴールに近づいているか、常に問う。
開発チーム、とりわけ、優秀な開発チームは技術的に長けている。だから、限られたタイムボックスでも結構な機能を作る。
時に、スプリントでコミットした以上の機能を作ってしまう。
「カンタンに作れるから、おまけで作っておいたよ」という具合に。
残念ながら、おまけで作られたモノは、往々にして、スプリントゴールから外れている。
そして、プロダクトを複雑にしてしまう。
アジャイルでは、なるべく作らないようにする。
プロダクトをシンプルに保つ。コードもシンプルに保つ。
最小限の機能で、最大の価値を提供するのがアジャイルだ。
機能が多くなると、プロダクトを複雑にしてしまう。
スプリントゴールを設定することで、ゴール達成までの最短ルートを意識できる。寄り道をして、ゴールと無関係なモノを作ってしまうリスクを回避できる。
常にゴールを意識することで、タスク駆動(計画駆動)になるのを避けられる。
アジャイルはゴール駆動型開発だ。
ゴールの実現が顧客価値を創造する。
ゴールは達成すべき事(What)である。
達成する方法はタスク(How)である。達成する方法はいくつもあるし、スプリント期間中に変わる。
進めていく過程で、よいアイデアが浮かぶかもしれない。
近道を見つけたら、スプリントバックログを変更して構わない。目の前の作業をしながら、ゴールへの最短のルートを模索する。
タスクは、常に動的だ。
一方、ゴールは固定である。
状況に応じて、方法を変えても、視線は常にゴールを見据えていないといけない。
アジャイルはゴール駆動型開発だ。
だが、残念なことに。。。
ゴールは固定でも、最初から究極のゴールが特定できるとは限らない。
小さなゴールを達成しながら、徐々に大きなゴールに近づいていくこともある。ゴールと思って登ったら、次の山が見えてくる。。
アジャイルでは、インクリメンタルにモノを作り、頻繁に顧客価値を届ける。
最初は小粒だが、徐々に増強していく。
小粒でも、モノを展開すれば、顧客からのフィードバックが具体化する。
想定通りの事もあるし、全く予想していない反応が来ることもある。
これは売れると思った機能が今ひとつで、ボーナスフィーチャーが大反響であることも。
顧客のフィードバックにより、ゴールを軌道修正していく。ゴールを進化させていく。
ゴールは、一つのスプリント、一つのリリースでは固定でも、実現すると次のゴールは変わっていくものだ。
スプリントゴールを達成したら、次のスプリントの準備をするが、次のスプリントゴールは当初考えていたものと違う。リリースもしかり。今のリリースゴールを達成したら、次のリリースゴールは変わっているだろう。
だから、我々も、クライアントと共に、動くゴールに向かって歩み続ける。
顧客のゴールが固定、かつ、最終形であれば、それに向かって準備することはカンタンである。
方法は複数あるが、最適なアプローチを選べばいい。
顧客のゴールが進化する場合、追従していくしかない。
顧客の求める価値、すなわちゴールが変遷して、取り巻く世界もダイナミックに動いている。だから、「我々は、6ヶ月後にこうなっている」と1ミリ違わず予測することは不可能である。
ゴールも変わる前提で、追従していく。
周りを見ると、追従するプロダクトやサービスはたくさんある。
- 追従ドライブ支援機能(クルーズコントロール)
- テレビ番組の追従録画機能(時間が前後しても、番組を特定して録画してくれる機能)
- 追従型広告(時にうるさいこともあるが・・)
- 追従ミサイル
あらゆるものが動的だ。
刻一刻と、周りの状況が動いているから、我々もコンスタントに調整しなくてはならない。
ロックオンする対象がなんであれ、加速したり、スピードダウンしたり、右か左に旋回するかわからないのだから、追従する他ないだろう。
追従する過程で、顧客からフィードバックを獲得し、行動パターンやビヘイビアについてデータを蓄積する。
データを分析することで、次のゴールを予測する。
最初は無知なのだから、スクラムの “Inspect & Adapt” をぐるぐる回そう。
情報の透明性を高め、検査と適応を繰り返そう。
だから、ゴール駆動だけでなく、変化追従型であることも必要だ。
プロダクトインクリメントを通して、一つ一つ、小さなゴールを達成していく。
期待する価値が得られそうなら、そのまま続ける。ゴールは固定していく。
期待する価値が得られないなら、ゴール変更である。追従する。
変われば、適応し、追従を繰り返す。
そして、最後に、顧客価値を創造するゴールにたどり着く。
だから、ゴール駆動型変化追従型アプローチである。
最後に、変化を取り入れる上で、私がイメージしているものを共有したい。
「水」である。
水は無限にカタチを変えられる。枠があれば、どんなカタチでも自由自在だ。
水が表現できないものは、皆無である。
そして、温度の変化すら取り入れる。
温度が上がれば、個体から、液体、そして気体に変質する。
温度が下がれば、気体から、液体、そして固体に戻っていく。
水のように変化を取り入れられれば、変化を味方に付けられれば、絶えず変化し続ける顧客の価値を創造し続けられるだろう。
変化に眉を顰めず、柔軟に、おおらかに、変化を楽しんで生きたいものである。
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