アジャイルチームは、ディシプリンな自己組織化チーム

アジャイルチームは、ディシプリンな自己組織化チームである。

ディシプリンは訓練された、自制心のある、という意味だ。
ひと言で言うなら、「規律あるチーム」ということである。

一見、「ディシプリン」と「自己組織化」は相容れないと感じるかもしれないが、この2つが揃わないと、チームは正しく機能しない。

順番に説明しよう。

ディシプリンは、「規律」だ。
アジャイルチームは、自己組織化された機能横断的なチームといわれるが、これだけでは、「自ら思考し行動する、柔軟なチーム」というだけである。

プロダクトには、ビジョンと方針がある。
ビジョンと方針を欠いたまま、自己組織化すると、無秩序状態になりかねない。

組織の経営戦略を、プロダクトに割り振って実装する。
そして、チームがプロダクト・ビジョンと方針とのアライメントを取る。そうすることで、造り出すプロダクトが、プロダクトの掲げる成果を後押しし、企業戦略を推進する。

プロダクト・ゴールと整合した「規律あるチーム」でなくてはならない。

次に、自己組織化チームについて、説明しよう。

スクラムの生みの親のであるジェフ・サザーランド氏の書籍「スクラム」の中で、自己組織化のヒントになる一節があるので紹介したい。

以下は、「スクラム ー 仕事が4倍速くなる” 世界標準”のチーム戦術」からの引用である。

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ブルックスはこう切り出した。
「私たちはこれまで長い間、優れた知能を持つロボットを造ろうとしてきました。莫大な費用と長い長い年月をかけて、巨大なコンピューターとデータベースを構築して。でもできたのは、チェスで人間に勝てるコンピューターどまりでした」

ブルックスのロボットは全く違うアプローチをとったのだという。
中心となる頭脳を一つ備えるのではなく、六本の足それぞれが頭脳を持つロボットを設計したのだ。
脊柱部分のプロセッサでは、いくつかのシンプルな動きをつかさどる。前に進む、後ろに下がる、他の足とぶつからないようにする、などだ。
ロボットの頭脳に埋め込んだ神経ネットワークのチップがこうした法則を把握していて、それに従って全体を見る審判のような役目をする。
障害物にぶつかると、チップはカメラを通して見た情報を足に伝える。

ブルックスの話によると、面白いことにロボット電源を入れて立ち上げると、その都度どう歩くかを一から学習するのだという。
部屋のどこに何があるかを記憶したデータベースがあるわけではない。
いわば目の前の世界そのものがデータベースだった。

ロボットはスイッチを入れるたびに一から学習する。何かにぶつかり、現実の環境から学んでいく。
言い換えれば、どんな環境にも適応できるのだ。

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著者 ジェフ・サザーランド
訳者 石垣 賀子

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文中に登場するブルックスとは、MIT名誉教授のロドニー・ブルックス氏のことである。
ご存じの方も多いと思うが、ブルックス氏は iRobotの共同創業者のひとりである。
あの掃除機のルンバ、そして軍用ロボットのパックボットを造った人物だ。

引用文の味噌は、6つの脚それぞれに頭脳を持たせ、個々の脚が自分で判断して動くと言うことである。とかく、ロボットと言うと、中枢となる頭脳ばかり意識しがちだ。だが、アルゴリズムを個々の脚に搭載し、個々の脚が状況を捉えて判断していく。コントロールを集中させるのでなく、分散させるのがポイントだ。

あらかじめプログラミングされている訳ではないから、どんな環境でも歩くことができる。

ルンバを毎回ちがう部屋に置いても、自分で状況を観察して、自分で学習して、掃除する。
自ら思考するケーパビリティーを持っているから、新しい環境でも対応できる。

顧客のニーズは刻一刻と変わる。
だから、逐一上層部にエスカレーションして相談していると、リアルタイムでの判断ができない。
上層部から指示が降りて来る頃には、状況が一変しているのである。

多くの企業が、分社化、分権化、ローカライゼーションを進めるのは、めまぐるしい変化に適応し、リアルタイムで判断する瞬発力を獲得するためである。

もう一つ例をあげよう。

スクラムの語源にもなっているラグビー。
ラグビーでは、フィールドの上で、戦略を練り、実行に移すのは選手だ。

試合で、対戦チームと対峙し、スクラムを組む。
相手のパワーを直接肌で感じ取れるのは選手だけだ。現場の状況を一番知るのは現場である。
最新かつ具体的な情報を基に、リアルタイムに判断すれば、成功率は高くなる。

状況を掴み、判断し、即座に行動に移すには、現場による自己組織化しかない。

だから、ディシプリンな自己組織化チームが必要だ。

マネジメントとチームに、それぞれ留意点がある。

マネジメントの注意点。
経営層が責任を取ること。
現場に任せるから、現場に責任を取らせる、ではいけない。
現場に責任を取らせると、現場は挑戦しない。1番重要な事より、確実な事を行うようになる。リスクを回避して、安全な方法を取る。
だから、上手くいかなくても、経営者が全責任を取る覚悟が必要だ。

チームの注意点。
チームは、マネジメントの信頼を勝ち取るよう行動する。
「アジャイルチームは、自己組織化チームである」と言ったところで、信頼されないと任せてもらえない。

信頼とは、字のごとく、信じて頼まれることだ。そこには、マネジメントの期待がある。
「このチームならやれる、やり遂げる」という思いがある。

信頼してもらうには、3つのことが必要だ。

  • 誠意がある。 嘘偽りがなく、常に、誠意をもって行動すること。
  • 透明性。 状況や情報をオープンにし、何を見て、どのように判断したのか、誰の目にも明らかなこと。
  • 実装能力。 ミッションを完遂する知識・スキル・経験を有していること。価値を届けるケーパビリティーを備えていること。

この3つ揃って、初めてマネジメントに任せてもらえる。
だから、自己組織化チームとして柔軟に動いていけるのである。

もう一度まとめよう。

本質的に価値のあるプロダクトを造るには、「ディシプリンな自己組織化チーム」でなくてはならない。
そして、経営層は、チームの行動に対して、100%責任を取る覚悟が必要だ。
そして、チームは経営層から信頼を勝ち取るため、誠実に行動し、状況の透明性を高め、確かな遂行能力を示していくことが必要である。

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