Prince2はウォーターフォールなのか プロジェクト方法論とデリバリー手法の違い

Prince2はウォーターフォール?

ちょくちょく聞かれる質問である。同様の疑問を持つ人もいるだろうから書いておこう。

私の結論は「ノー」である。
プリンスはウォーターフォールではない。

だからと言って、プリンスはアジャイルでもない。
「プリンスはプロジェクトガバナンス」である。

まず、このような疑問がでる理由を考えてみよう。

プリンスには2つの公式マニュアルがある。

  • PRINCE2
  • PRINCE2 AGILE

共に、大文字である。
そして、両方とも、アクセロス社から発行されている。

ややこしくしている原因のひとつに、”PRINCE2 WATERFALL”の公式マニュアルがないことだ。

だから、標準版プリンスはウォーターフォールなのかと聞かれても不思議ではない。

私の考えはこうだ。

プリンスは「プロジェクトガバナンスの方法論」である。
プロジェクトを、どうやって管理監督するのか説く。

一方、「アジャイル」や「ウォーターフォール」はソリューションのデリバリー手法だ。

漸進的に反復してカタチにしていくか、ひとつひとつ積み上げてまとめてカタチにしていくかの話である。

何か新しいモノを創り出したり、既存のモノを新しいモノに作り替えたりする際、プロジェクト化する。

プロジェクトを上手く回す方法がPrince2である。
そして、アイデアをカタチにする手法がアジャイルであり、ウォーターフォールである。

プリンスは、アジャイルやウォーターフォールより上位の概念なのだ。

プリンスには7つの原理原則がある。
照らし合わせて確認してみよう。

まずは原理原則をあげる。

  1. ビジネス正当性の継続
  2. 経験から学ぶ
  3. 役割責任
  4. 段階のマネジメント
  5. 例外のマネジメント
  6. 成果物重視
  7. プロジェクト環境に合わせたテーラリング

ひとつ目の「ビジネス正当性の継続」。

これは、プロジェクトのライフサイクルを通して、継続するか止めるかを常にチェックしていく原則である。ソリューションのデリバリー手法がアジャイルであれ、ウォーターフォールであれ、組織の経営層が判断していかなくてはならないプロジェクトのガバナンスである。

ふたつ目の「経験から学ぶ」。

これは、プロジェクトの段階(ステージ)毎に、立ち止まって、ふりかえり、経験から学ぶ原則である。経験主義のアジャイルに通じるところもあるだろう。
これも、ソリューションのデリバリーモデルがなんであれ、節目で立ち止まってふりかえり、プロジェクトガバナンスを最適化しようとする原則である。

三つ目の「役割責任」。

デリバリーモデルがスクラムならプロダクトオーナーやスクラムマスターが登場する。従来型ならチームマネージャーやチームリードだろう。
登場する役割がなんであれ、プロジェクト内の役割責任を明確にし、円滑に運営すべしと説くのがプリンスのプロジェクトガバナンスである。

四つ目の「段階のマネジメント」。

これは、プロジェクトに中間チェックポイントを設けて、長期のプロジェクトを分割し、段階単位で管理監督していく原則である。

アジャイルなら、段階(ステージ)をリリースと読み替えることができる。ウォーターフォールなら、基盤構築を第一段階とし、アプリケーション構築を第二段階としてもいい。
もちろん、技術フェーズに分けて、第一段階を「要件定義」、第二段階を「設計」、第三段階を「開発」、第四段階を「テスト」にしてもかまわない。
プリンスでは「マネジメントステージはテクニカルステージではない」と明確に謳っている(もちろん、合わせても構わない)。
段階毎に完結し、プロジェクトの進み具合と周囲の環境を評価し、go/no-goを判断するプロジェクトレベルのガバナンスである。

五つ目の「例外のマネジメント」。

これは、あらかじめプロジェクトの許容度を設定し、許容度を逸脱したら、直ちに経営層にエスカレーションする原則である。

アジャイルなら、時間とリソースが許容度ゼロである。ウォーターフォールなら、スコープの許容度がゼロであろう。
デリバリーモデルにより、許容できるパラメーターや、許容度レベルは変わるが、いずれのケースも、許容度を逸脱したらエスカレーションするプロジェクトガバナンスは同じである。

六つ目の「成果物重視」。

これは「する作業」ではなく、「作る成果物」に注目する原理原則である。

アジャイルの「動作するソフトウェア」を重視するスタンスに似ていると言える。
ものの作り方、ソリューションはいくらでもある。だから、最終的に届けられるアウトプットに注目しようとするのがプリンスの原則だ。いかにアウトプットを形成するかのデリバリー手法は限定されていない。

七つ目の「プロジェクト環境に合わせたテーラリング」。

これは、プロジェクトを取り巻く状況に併せて最適化する原則だ。
不透明な状況ならアジャイルだろう。ソリューションとなる技術の経験値があり、見通しの効く案件ならウォーターフォールでしとめてもいい。与えられたコンテキストにあわせて、最適なデリバリーモデルを選択するよう説くプロジェクトガバナンスだ。

さて、最初の質問に戻ろう。

Prince2はウォータフォールなの?

私の結論は「ノー」だ。
プリンスは、プロジェクトガバナンスである。

Prince2をもっと詳しく知りたい方は、公式マニュアル(日本語版)をどうぞ。

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