Prince2 Agileでは、アジロメーター “The Agilometer” を紹介している。
アジロメーターとは、プロジェクトの置かれた状況が、どれだけアジャイルフレンドリーであるかを評価する「アジャイル適合性スライダー」のことだ。
アジロメーターを通して、アジャイルなプロジェクトがどれだけしやすいか(または、しにくいか)を把握し、プロジェクトの進め方を最適化する。
アジロメーターは、プロジェクトのライフサイクルを通して行われる。
プロジェクト開始前の評価はProject Brief(プロジェクト要約書)に纏められる。その後、リスクを洗い出し、計画を洗練し、PID(プロジェクト立上げ文書)に纏められる。その後も、マネジメント段階毎に、継続的に評価し、PMはプロジェクト委員会の支援を受けながらプロジェクトを運営していく。
アジロメーターの評価軸は6つある。
まず、原文のまま載せよう。
- Flexibility on what is delivered
- Level of collaboration
- Ease of communication
- Ability to work iteratively and deliver incrementally
- Advantageous environmental conditions
- Acceptance of agile
これら6つのスライダー毎に、1~5のレンジでスコアリングする。”1″が最低、”5″が最高である。
アジャイルなプロジェクト運営に最適なのは”5″だ。
6つの評価軸は個別に評価する。評価の低い項目がリスク領域であり、改善が必要な箇所である。
「合計値」を出したり、「平均値」を出しても意味がない。まとめてしまうと課題が見えにくくなってしまうから、個々の項目毎に評価し、改善していく。
実際のアジロメーターも載せておく(Prince2 Agile公式マニュアルより抜粋)。
では、ひとつづつ見ていこう。
Flexibility on what is delivered
- 利害関係者が、スコープを柔軟に調整するマインドを持っているか
- 利害関係者が、スコープ変更がつきものであることを理解しているか
- スコープを変更することで、顧客にとって正しい製品・サービスになることを理解しているか
- スコープは優先順位付けできることを理解しているか(MoSCoW等のテクニックを知っているか)
- 優先順位付けすることで、納期を厳守し、顧客価値を速やかに届けられることを理解しているか
- スコープを盛ることは、納期を圧迫し、品質を悪化させることを理解しているか
Level of collaboration
- ワンチームの文化があるか
- 「使い手」と「作り手」の間にパートナーの意識があるか
- サイロや縄張り意識がないこと
- 互いに信頼し、助け合う雰囲気があるか
- メンバーを非難したり、ccメールを多用していないか
- 誤りを学びとして受け入れる土壌があるか
Ease of communication
- 会話がしやすいようにチームがコロケーションしているか(地理的に分散していても、ビデオコンファレンス等の仕組みが確立しているか)
- 見える化が徹底されており、情報の透明性が高いか
- 情報はローテクで管理されており、誰もがアクセスできるか
- フェースツーフェースの非公式なコミュニケーションが頻繁にあるか
- 公式な報告は必要最小限か
Ability to work iteratively and deliver incrementally
- 大きく考え、小さく始めることで、顧客に早い段階で価値を届けられることを理解しているか
- 反復して漸進的に作業する方が、一度にまとめて作業するより好ましいと考えているか
- チームは創造性を発揮し、実験しながら学んでいくアプローチが好きか
- ものごとが最初から正確であることはありえないと理解しているか
- 少しずつ頻繁に進めることが、安全で管理しやすい進め方であると理解しているか
- 漸進的であることが、顧客の真のフィードバックを獲得し、顧客に正しい製品を届けることに繋がると理解しているか
Advantageous environmental conditions
- チームは安定していて、メンバーは専任か
- チームはインクリメントを作る全てのスキル・経験を備えているか
- 利害関係者は、アジャイルな働き方に慣れているか
- ガバナンスや契約がアジャイルな働き方にブレーキをかけていないか
- 各種ツールがアジャイルな働き方を効果的に支援しているか
Acceptance of agile
- 直接の利害関係者だけでなく、間接的な利害関係者もアジャイルな働き方を理解しているか
- 利害関係者は、アジャイルな働き方と従来型の働き方の違いを理解しているか
- 利害関係者は、従来型よりもアジャイルな働き方が好ましいと思っているか
- 利害関係者は、適切なレベルで研修を受け、アジャイルを正しく理解しているか
プロジェクトマネージャーは、アジロメーターを使い、プロジェクトを取り巻く環境がアジャイルにフィットしているか継続的に評価する。そして、課題を特定し、改善計画を策定し、プロジェクト委員会の支援を得ながら、アジャイルなプロジェクトを実践していく。
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