プロダクトオーナーは「集中型」開発チームは「分散型」

プロダクトオーナーは「集中型」。
開発チームは「分散型」である。

スクラムでは、プロダクトオーナは「顧客の声」だ。
プロダクトオーナは、プロダクトに関わる利害関係者からあらゆる要求を引き出し、分析し、評価する。
そして、プロダクトバックログの優先順位付けを通して、「顧客の声」を開発チームに伝達する。

「集中」の字のごとく、プロダクトのアイデアを真ん中に集める。
真ん中は、顧客の代表者であるプロダクトオーナーである。
プロダクトのアイデアを、プロダクトオーナーに集中させる。

プロダクトオーナーは「顧客の声」を開発チームに伝達する際、非機能要件についても明確化する。
プロダクトの個々の要求ごとに「受入基準」を設定し、合格・不合格のレベルを明確にする。

「受入基準」は大別すると2種類ある。

  • 利用者の受入基準
  • 運用・保守の受入基準

プロダクトオーナーは、この両方を明確化しなくてはならない。

サービス利用者の受入基準は「操作性」、「快適性」、「可用性」等。

運用・保守の受入基準は「拡張性」、「移植性」、「セキュリティー」等。運用・保守の受入基準はPOだけだと難しいこともあるから開発チームにサポートしてもらいながら定義する。

プロダクトオーナーは、顧客価値を創造し、プロダクトを長期にわたり維持するために、製品・サービスのあらゆる要求とその「受入基準」を定義する。

だから、プロダクト情報をプロダクトオーナーに「集中」し、プロダクトオーナーが「総合的に判断」できる仕組みが必要不可欠である。

では、次に、開発チームを見てみよう。
開発チームは「分散型」だ。

開発チームは、自己組織化された機能横断型チームである。
開発チーム内に担当、階層、指揮系統はない。
メンバー全員が「一枚岩になって協業」する。

1つの要求やストーリーを、チーム全員でコラボレーションして仕上げる。

メンバーは、各自で作業状況を見て、判断し、行動していく。わからないことがあれば、メンバー間で調整して同期を取る。

これは、正に分散である。
チームを率いるリーダーも、チームを管理するマネージャーもいない。
メンバー全員が、自律して、考え、判断することが期待されており、共通ゴールに向かって、協業しながら作業を完遂することが求められている。

水泳をイメージして欲しい。
泳ぐ時、体全体を使う。利き手だけで泳ぐ人はいない。
水泳では、ストロークやキックのタイミングが重要だ。ムダな動きをすると減速してしまう。パワーを効率よくスピードに伝達するには、頭のてっぺんから足の爪の先まで、ボディー全体の動きをうまくシンクロしなくてはならない。

ボート競技と同じく、一糸乱れぬチームワークが必要だ。呼吸、テンポ、全てのオールがあたかも繋がっているかのようなシンクロナイゼーション。前へ。前へ。更に前へ。力とベクトルを合わせて、推進力を最大化する。

アイデアをカタチにする段階では、洗い出したり定義したりするだけでは意味がない。
体全体で、チームの全細胞を集結して実行していく。自分1人では、2つの目、2つの腕、10本の指しかないが、チームならたくさんの目、腕、指を総動員してインクリメントを作れる。

メンバー全員が、相互に調整しあいながら、個々に求められる動きを判断し、その時々の状況に応じて、ジャストインタイムで行動していく。

これは、自律した同期化だ。

プロダクトのアイデアは、プロダクトオーナーに集中する。
そして、アイデアをカタチにする際は、権限をを個々のメンバーに分散し、自律的同期化を促す。

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