チームや組織がアジャイルな働き方ができているか判断する方法として、「アジャイルソフトウェア開発宣言」や「アジャイル宣言の背後にある原則」と比較してみる方法があります。
ギャップを埋めることで、アジャイルな働き方にシフトしていく訳ですが、一般的に、日本を作ってきた伝統的な会社であればあるほど、ギャップが大きく、変革に大きなパワーが必要になります。
アジャイルは従来の考え方と大きく異なります。ですから、変化云々の前に、正しくアジャイルを理解することが先決です。
私がアジャイルトレーナーやコーチとして入る際、一般に以下の流れとなります。
- 集合研修
- 現場コーチ
アジャイルやスクラムのチームができていなければ、先にチームを編成してもらい、関わる人たちを集めてから集合研修をおこないます。
スクラムチームにスクラムマスターがいれば、コーチングはスクラムマスター中心に行います。アジャイルコーチはスクラムチーム外の支援者になりますから、まずチームの自律化を促す軸となるスクラムマスターが機能するようコーチングします。
ここで重要なポイントは、スクラムマスターが集合研修で学んだことや、コーチングで受けたアドバイスを基に、「チームを巻き込んでどれだけアジャイルな働き方を推進することができるか」です。
スクラムマスターがスクラムイベントやその意味合いを理解していなかったり、アジャイル宣言や12の原則の理解が浅い場合、チームのアジャイル化を十分に指導することができません。そのようなケースでは、1ヶ月経っても、ほとんど状況が変わりません。
教育業界では、「70:20:10モデル」という考え方があります。
- 現場での実務を通して経験から学ぶ:70%
- 現場でのコーチングから学ぶ:20%
- 研修にから学ぶ:10%
(ソース:it workforce.com)
人の知識やスキルの定着率を見ると、その70%が実際の経験によるものである。現場コーチングは20%、集合研修はたったの10%のインパクトしか与えられません。
言い換えれば、わかりやすい研修を実施し、効果的なコーチングを施しても、現場が実際にやってみなければアジャイル化は加速しません。
自転車と同じで、構造を理解し、乗り方を教わっても、本人が乗ってみなければ、永遠に乗れないのです。
そこで。。
スクラムマスターがアジャイルの理解が乏しくチームをコーチングできない、またはチームがスクラムマスターをアジャイルのエキスパートと見なしておらず、スクラムマスターやスクラムイベントを軽視しているケースでは、コーチがスクラムマスターを買って出ることがあります。
本来アジャイルコーチは、チームの外からアジャイルトランスフォーメーションの「触媒」となる存在ですが、スクラムマスターとして2~3スプリントに渡りスクラムイベントをファシリテートします。
- タイムボックスの重要性を説く
- スクラムイベントが「検査」と「適応」のイベントであることを説く
- インクリメントとプロセスの「透明性」の重要性を説く
- 役割、作成物、スクラムイベントとその位置づけを理解してもらう
- スクラムの5つの価値基準を自ら体現し、示す
スプリントサイクルは1週間。ふりかえりの頻度を増やし、デイリーとスプリント単位で計画・再計画を繰り返します。毎週同じ日にスクラムイベントを開催することで、週1~2回のコーチングでも支援しやすいメリットもあります。
スクラムマスターの役割なら、チームへの関与度も高められるし、インパクトの高いコーチングが可能だ。3週間くらい継続すれば、チームはアジャイルな働き方に慣れてくるし、本来のスクラムマスターも具体的なやり方がわかってくるから、「やってみる」ハードルはぐっと下がる。
組織やチームがあまりにもアジャイルを知らない場合や、組織的にアジャイルトランスフォーメーションを急いでいる場合、スクラムマスターだけにコーチングしてもあまり効果的でないことがある。そんな時は、自らアジャイルな働き方を示し、スクラムチーム全体に直接コーチングしていくアプローチを採る。
あなたが加速していないと思うなら、師範自らお手本を見せ、チームを巻き込んでいく動きを採ろう。
アジャイルコーチング
アジャイルメンターやコーチのバイブル的書籍。200ページ少々で読みやすい。著者はレイチェル・デイビス氏とリズ・セドレー氏。翻訳者は永瀬美穂氏と角征典氏。「コーチングの基本」から始まり、〆の14章は「あなたの成長」である。お薦めです。
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