アジャイルは変化が絶えず、未来の予測可能性が低い状況で使われる進め方だ。だから、ずれがないか頻繁に点検し、軌道修正を繰り返す。
あらゆる業界や組織に言えることだが、ベストプラクティスと言われる標準プロセスがある。中にはガバナンスとしてルール化されているケースもある。
だが、既存の仕組みは、今の状況を取り込みリアルタイムの価値を届けることをよしとするアジャイルとは相性がよくない。
例えば、スクラムは現状の「透明性」を高め「検査」と「適応」を繰り返す。だから、現状によっては決められたプロセスを変更して最適な進め方に調整する。
作業プロセスは臨機応変に最適化されるのだ。だれも未来は予測できない。だから、現場の当事者が、創造性を発揮し、自分たちのふるまいを状況に噛み合わせ、アウトプットを最適化する。
先日鮨屋でイカを食べたときに板前がこんなことを言っていた。
イカは季節によっても個体によっても、違いが大きいんです。その時その時で、包丁の入れ方、切り方、厚みを調整します。同じ歯ごたえを出すために変えています。
私はネタによって、切り方や厚みは決まっているのだと思っていたから、頭をぶん殴られたかのようにびっくりした。仕入れたネタの状態によって、そして掴んだネタの状態によって、即計算して顧客体験が均一になるようプロセスを最適化していたのである。恐るべし鮨職人。
話を戻そう。
誰でも同じアウトプットが作れるように、プロセスを標準化する話はよく聞く。だが、インプットが違う場合、プロセスが同じでもアウトプットは変わってくる。標準プロセスが生きるのは、インプットが均一でバラツキがない事が条件になる。
変化がつきもので、未来の予測可能性が低い状況の中、画一的な手順でモノをつくることは、間違ったモノを作ってしまうことに等しい。
変化が激しく、アジャイルが必要とされる状況であればあるほど、毎回の状況に応じてプロセスを柔軟に調整する創造性が欠かせない。
プロセスの標準化、ガバナンスは、本当に旨いものを提供するには足枷になってしまう仕組みなのである。職人やエンジニアが創造性を発揮できるようガバナンスは最低限にすべきだろう。箸の上げ下げまでルール化されたのでは、自動化は進むかもしれないが、まずくて食えないモノができるばかりだ。
アジャイルサムライ 達人開発者へ道
アジャイルを一通り学べる300ページ程の書籍。監訳は西村直人氏、角谷信太郎氏。
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