スクラムマスター1年生のあなた贈る新しい働き方5つのポイント

スクラムマスターは「アジャイルな役割」そのものである。従来型組織のどのロールとも違う、全く新しい役割だ。

一説ではスクラムマスターの前職の40%はプロジェクトマネージャーであるそうだ。アジャイルなプロジェクトなんだから、現場責任者はスクラムマスターだということなのかもしれないが、残念ながら誤りである。
スクラムマスターにはプロジェクトマネージャーと共通する資質もあるが、行動パターンや振る舞いは対照的と言っていい。

スクラムマスターの前職トップ3はプロジェクトマネージャー、ビジネスアナリスト、開発チームマネージャーだが、そのどれとも似ていない。全く別の新しいロールなので、役職名が変わっただけですることは同じということにならないようにしよう。

ではスクラムマスターとはどのようなロールで何をすればいいのか。

スクラムマスターの役割は以下の5つだ。

  1. プロダクトオーナー、開発チーム、外部のステークホルダーにティーチング・コーチングを通してスクラムを正しく理解してもらう
  2. 必要に応じてスクラムイベントをファシリテートする
  3. プロダクト開発に関するあらゆる妨害を排除する
  4. プロダクトおよびプロセスに好ましい変化を促す
  5. 高いモチベーションを維持し、スクラムチーム内および外部のステークホルダーとの信頼を醸成する

プロダクトオーナー、開発チーム、外部のステークホルダーにティーチング・コーチングを通してスクラムを正しく理解してもらう

スクラムマスターの仕事は優れたプロダクトを制作するためにスクラムチームを支援することだ。支援の前提として、プロダクト制作に関わる人達が新しい働き方を理解している必要がある。スクラムマスターはスクラムのフレームワークと価値基準についてスクラムチームや外部のステークホルダーに教えなくてはならない。知らないことはできないのだ。

具体的には、アジャイルやスクラムの考え方の集合研修やスクラムガイドの勉強会などがある。対象者の規模や習熟度によって、最も効果的なティーチング・コーチング方法を考えよう。

必要に応じてスクラムイベントをファシリテートする

スクラムには5つのイベントがある。スプリントプランニング、デイリースクラム、スプリントレビュー、スプリントレトロスペクティブ、そしてこれら4つのコンテナであるスプリント(反復)である。3ヶ月を目処にチームが自分達でイベントをできるように仕向ける。だが、最初はスクラムマスターがファシリテートしよう。その際、プロダクトオーナーと開発チームが平等に会話できるように注意しよう。どちらかに圧力がかかると高価値のプロダクト制作が難しくなる。この2つの役割は担う責任が異なるだけで上下関係はない。お互い同じ目的を共有するスクラムチームのメンバーなのである。

プロダクト開発に関するあらゆる妨害を排除する

前提として、開発チームは自己組織化しており機能横断的である。だから、まず自分達で課題を解決するクセをつけよう。チームが克服できる課題はチームに任せればいい。
だが、中にはチームだけではどうしようもない課題もある。組織的なルール、契約、技術的制約、競合するプロダクトやプロジェクトからの割り込み等、チームが自己解決できない課題はスクラムマスターが巻き取って対処する。チームが壊れないように守るのはスクラムマスターの仕事だ。組織的な課題は1人で立ち向かうのが困難なものもある。それらは同僚のスクラムマスターと共同して倒していこう。スクラムマスターはチームのサーバントリーダーだ。

プロダクトおよびプロセスに好ましい変化を促す

スクラムは経験主義を基本にしており、その実現に不可欠なのが透明性・検査・適応のメカニズムだ。制作中のプロダクトや進め方の透明性を最大限高めることで、検査と適応をリアルな現実に噛み合わせ、速やかな軌道修正を可能にする。結果、予測可能性を最大化しリスクを最小化する。

検査と適応のベースとなるのが透明性であり、スクラムマスターはその透明性の”守り神”である。スクラムチームが日々制作しているプロダクトとそこに介在するプロセスを透明化して、よりよい製品や働き方に繋がる変化を促すのもスクラムマスターの仕事だ。継続的なカイゼンをチームに促そう。スプリントを楽しむもっとよい方法をチームから引きだそう。変わり続けることは好ましいことであることを自ら示していこう。

高いモチベーションを維持し、スクラムチーム内および外部のステークホルダーとの信頼を醸成する

信頼を得る1番の方法は結果を出すことである。プロダクトオーナーの要求を、優先順に開発チームがコミットしてスプリントで完成させる。これを繰り返すことで、スクラムチーム内に信頼が生まれる。価値あるプロダクトを定期的に外部のステークホルダーに届けていくことで、周りの関係者との信頼を築いていく。信頼とは成果を積み重ねることで蓄積され固まっていくものなのだ。

成果をだすには高いモチベーションが必要だ。そしてモチベーションは伝播する。だから、スクラムマスター自ら高いモチベーションを維持しチームにエネルギーを与え続けることが大切だ。成果にフォーカスし、モチベーションを備えたスクラムマスターは現場に好ましい影響を与える。

もう一度纏めておこう。スクラムマスターになったら、この5つのポイントを常に意識しよう。

  1. プロダクトオーナー、開発チーム、外部のステークホルダーにティーチング・コーチングを通してスクラムを正しく理解してもらう

  2. 必要に応じてスクラムイベントをファシリテートする

  3. プロダクト開発に関するあらゆる妨害を排除する

  4. プロダクトおよびプロセスに好ましい変化を促す

  5. 高いモチベーションを維持し、スクラムチーム内および外部のステークホルダーとの信頼を醸成する

スクラムの考え方と価値基準を教え、スクラムイベントをファシリテートし、作業に専念できる環境をつくり、製品とプロセスに好ましい変化を促し、プロダクト制作全般に関わるステークホルダーとの信頼を築く、これがスクラムマスターになることだ。

最後にスクラムマスターの役割について理解が更に深まるリンクも貼っておくので参考にしていただきたい。

スクラムマスタとマネジャの違い by @newta氏

スクラムマスターの仕事にはどんなものがあるか by Ryuzee氏

スクラムマスターは保育園の先生に似ている by kawaguti氏