人間が一度にできることはひとつだけ

ソフトウェアにおいて、頻繁に使われる機能は全体の2割程度であるというのは有名な話しだ。

下の図はスタンディッシュグループの調査結果である。

私たちはムダなものを作りすぎている。だから、やみくもに「成果物」を揃えるのではなく、意味ある「成果」にフォーカスしようというのが最近の風潮である。

たくさん作ろうとすると時間もエネルギーもかかる。多くの作業スペースも必要だ。だから、ムダなものは省いて、本当に価値のあるものを選んで作る。

私たちの生活を見てもムダに溢れている。

例えば毎日着るスーツ。いくつかあっても、好きな定番は決まっているのではないか。靴にしても履きやすいヘビロテがあるはずだ。鞄だって毎日変える人は少ないだろう。

移動にしてもしかり。電車通勤なら同じ時間の同じ電車ではないだろうか。毎日気分で違うルートで通勤を楽しむ優雅な人はあまりいない。車で移動する人で、何台も所有している人でも、いつも同じ車で出社するのではないか。週末にはスポーツカーに乗り換える人もいるだろうが、人間が一度に乗れる車は一台だ。私も用途に応じて3台の車を持ちたい輩なので、ガレージに5台も10台も収めている人を見るとうらやましい限りだが、8割は普段乗らないムダな車なのである。

住宅にしてもしかり。別荘があっても、海外にもう1つ自宅があっても、一度に住めるのは一カ所だ。忙しそうな人で、たまに自分がもう1人欲しいという人に出くわすが、自分という人間は世の中にひとりしかいないわけで、同時に複数地点で時間を過ごすことはできない。

人は物理的に一度に一カ所で1つのことしかできないように創られているのである。

万人に共通な24時間という時間、そして物理的にたった1つの体。この与えられた制約の中で精一杯生きることになる。

だから、競合するプロジェクトポートフォリオの調整とか、複数プロジェクトのPMを兼務したり、マルチタスクというのは人間の本質的な創られ方とマッチしない。

あれもこれも手を出して中途半端にせず、一度に1つの場所で1つの事に集中して速やかに仕上げる。仕上げてから次の作業にとりかかる。

今置かれた環境の中で、普段使わないムダは断捨離しよう。本当に必要なことを選び抜こう。そして、選んだものに最大のエネルギーと集中力を注ごう。

人が1度にできることは1つだけなのだから。

マルチタスクのムダについてはこちらの記事もどうぞ。