私がアメリカミネソタ州に住んでいた学生時代の話しである。
アメリカでハロウィンが終るとやってくるのが感謝祭(サンクス・ギビング)である。そしてこの時期、アメリカの学生は全員実家に帰る。だから、ドミトリー(学生寮)は静まり返っている。わずかに残っているのは、母国に帰れないお金のない留学生たちだ。そして私もその一人であった。
「アメリカンが皆楽しんでいるんだから、俺たちもなんかしようぜ」という話になった。そして、翌朝、留学生6人でスキーをするためコロラドに向けて出発した。
クルマ2台に3人ずつ乗って、ミネソタ → サウスダコタ → ネブラスカ → コロラドの1,600キロの移動である。体力だけはある男ばかりの移動だから、モーテルなんか止まらない。目的地までひた走る。
しくみはこうだ。前の席に2人。「ドライバー」と「ナビゲーター」。ナビゲーターは地図を見ながらドライバーにルートを教える。アメリカのハイウェイはわかりやすいから、ほぼ一直線なのであるが・・。そして後部席は横になって寝るスペースだ。2台の車はトランシーバーを使って連絡を取り合う。次のサービスエリアで一息つこうかとか、お互いの進み具合をチェックしながら、追いついたり追い越されたりしながら同期をとる。目的地まで、ひた走る。
ゴールを目指してひた走るこの6人の動き、正にアジャイルなチームではないか。
ペアプロしながら(途中からはドライバーが寝てないかチェックする監視役であったが)、共通のゴールに向かって突き進む。相手の状態を見ながら、疲れたら交代だ。後ろには充電中のメンバーもいる。3人でローテーションしながら、ずんずん突き進む。ドライバー→後部座席で休憩→ナビゲーター→ドライバーの順だ。長距離運転に慣れているメンバーもいるし、すぐ交代したがるメンバーもいるが、それは同じチーム。助け合いだ。
そうこうしながらやっとコロラドに到着。安宿ではあったが皆でジャグジーにつかりながらビールを飲んだのがいい思い出だ。
- メンバー全員が同じゴールを共有
- 運命共同体
- 皆で助け合い、調整しあい、一枚岩となって進む
当時はアジャイルなんて知らなかったが、極めてアジャイルなチームであった。そして、ふりかえって感じることは、皆で助け合い、調整しあい、一枚岩となって進めたのは、「共通のゴール」があったこと。そして、その共通のゴールを達成するために、誰一人として欠けてはいけないという「強い仲間意識」があったことだ。
最近はモブプログラミング(モブ作業)がブームだが、「共通のゴール」と「強い仲間意識」と「一体感」が感じられることが理由だろう。
一人ではできないことが、チームならできる。だからスクラムは強い。