最近私が支援したチームに、自称「セミアジャイル」なチームがある。担当しているスクラムマスターと話すと、8月から年末までの5ヶ月間のプロジェクトで2週間スプリントで回していくという。
キックオフ資料を作っている最中で、おかしなところがないかチェックして欲しいという依頼だ。早速リリースプランを見せてもらった。矢羽根が3本走っていたので、5ヶ月で3回リリースするようであった。
だが、詳しく聞いてみると。。
3フェーズである。
- 要件定義フェーズ
- 開発フェーズ
- テストフェーズ
そして、最後にリリースである。
アジャイルと聞いていたから面食らってしまったが、彼の言い分はこうだ。
要件定義フェーズは6週間。2週間スプリントで3回転する。スプリントプランニングで要件定義に必要なタスクを洗い出し、所要時間も見積る。タスクカンバンとバーンチャートを使って進捗の見える化を図る。
最後にリリースを持ってくる伝統的なウォーターフォール型のプロジェクトだが、各フェーズではアジャイル要素を取り入れ、2週間刻みで検査と適応(?)のサイクルを回し、フェーズバーンダウンで進捗を追っていくという。なずけて「セミ・アジャイル」。どや顔のスクラムマスターを見て絶句してしまった。。
要求も具体化していない、そして今ある要求も変更の可能性が高いプロジェクトにおいて、最後までリリースを遅らせるのはリスクが高すぎる。3回のスプリントで要求の確度を高めながら要件を定義すると言うが、まだ見ぬ製品・サービスの要求を定義しきることは不可能なのである。
更に、「要件定義書」自体に顧客価値はない。中間成果物に工数をかけるのは労力の無駄でしかない。描画ツールを使って整形作業したり、文書化に凝って美しく仕上げるのは金メッキでしかない。予算の無駄遣いである。
アジャイルで1番してはいけないことは、顧客に価値をもたらさない中間成果物の金メッキである。
最終成果物に焦点をあて、速やかにデリバリーする。そもそも、最終成果物は最初からわからないのだから、早めに展開してフィードバックを獲得する。3回のフェーズゲートではなく、3回リリースを重ねて最適化していく。
アジャイルで1番してはいけないことは、納品しない文書に必要以上の手数をかけることだ。途中のモデリングは簡素にしよう。関係者の理解が進み、合意形成できれば事足りる。リードタイムを短縮しよう。今の作業が、顧客価値を創造するか考えよう。顧客価値に直結寄与しない作業は捨てる勇気を持とう。