先日都内のステーキハウスで食事をした時の話しである。
テーブルから重厚なワインセラーに目を向けると、ボトルを立てて並べているのが見える。それもカリフォルニアの高価なワインを何本も並べている。不思議に思ってウエイトレスに聞いてみた。
「ボトルを寝かせなくてもいいのですか?ワインの風味が変質しませんか?」
ウエイトレスは少々お待ちくださいと言って、ソムリエを連れてきてくれた。
金色のバッチがまぶしいソムリエが、よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに話してくれた。
「おっしゃるとおりボトルを寝かせた方が長期熟成に向いています」
「セラースペースに限りがあり、私たちはボトルを立てて管理しています。コルクが乾燥しないようセラーの湿度は90%に設定しています。日々ワインの出し入れをするため、平均湿度は85%程になります」
ワインに最適な湿度は70~75%だそうだ。これはワインを寝かせた状態での長期熟成を前提とした湿度で、湿度85%ならボトルを立てて管理しても味の劣化はないという。回転も速いので、ラベルにカビが生えることもないそうだ。
私はワインは横に寝かせておくものだと信じ切っていたからとても驚いた。そして、ソムリエの立てておいても創意工夫でワインの品質は維持できるという力強い説明にいたく感動した。
組織変革やプロセス改善において、既存のやり方と違うから、社内ルールだからという理由で思考停止状態に落ちいっているケースをよく見かける。
ボトルは横にするものだからではなく、その常識の先にある理由を探らなくてはならない。ワインの管理には、温度、湿度、暗さ、振動がないことが重要だと思うが、それらの条件を満たしていれば、ボトルは立てても寝かせてもいいのである。
カイゼンにおいて、常識を疑ってかかる。常識の先にある理由を探り、その条件を別の方法でも実現できないか考えてみる。