ある喫茶店での体験である。
朝の8時と言うこともあり、サラリーマンやOLで長蛇の列ができている。列に並ぶ気がしなかったので、私はテーブルに戻り、メールをチェックし、列が引いてからカウンターで注文した。
「長蛇の列で大変ですね」私は言葉をかけた。
すると、カウンターの女性スタッフはこう答えてくれた。
「たくさんのお客さまが来てくださるのでうれしいです。私たちはお客さまをお迎えするつもりで準備していますが、今日はお待たせしてしまいました」
私はすっかり感心してしまった。店長や経営者と話している訳ではない。レジのスタッフとの会話である。
500円ほどのコーヒーであったが、とてもおいしく感じたのは言うまでもない。
私はコーヒーが好きで、いろんな店で毎日3~4杯のコーヒーを飲むが、この店でのコーヒー体験は私の心に刻まれた。
顧客に価値やインパクトを与えるのは、コーヒー(成果物)だけでなく、コーヒーを軸とした一連の体験である。
- 店の外観
- 店に入ったときの風・香り
- 店の中の雰囲気
- ショーケースのケーキやお菓子によるビジュアル体験
- コーヒーを注文するときの体験・レジとのやりとり体験
- コーヒーを待つ体験・自分の一杯を作ってもらっているときの体験
- バリスタとの会話
- 自分のコーヒーを手にした時の、カップの造形・触った感触
- コーヒーを飲む体験(香り・苦み・口に含んだ時のコク、アフターテイスト)
- コーヒーを飲みながら過す店の中での体験
- 店を出るときの会話・気持ち
高品質なコーヒー(成果物)だけでは顧客価値は作れない。コーヒーに関わるスタートからエンドまでの顧客にとっての「コーヒー体験」に焦点をあてなければいけない。これから展開する製品やサービスが顧客の体験をどう向上させるのかを考えなくてはならない。よい製品・サービスを宣伝するのではなく、顧客の顔が思わずほころんでしまうようなしかけ(体験)を散りばめていくのである。
盛り込む機能が顧客の体験を特別なものにするのか、ちょっとしたサプライズがあるのか考えてみてはいかがだろう。