今回は契約について考えてみたいと思います。お客様がユーザーで、ベンダーがサプライヤーのパターンで考えて見ます。
一般的に、従来型開発では一括請負、アジャイル開発では準委任契約と言われます。もちろん、一括請負をベースにしつつプラスαの追加要件は準委任とか、準委任で始めて成果物が具体化したところで請負契約にスイッチするケースもあると思います。
仮に、あなたは今晩鯛めしを食べたいとします。滞在している旅館で鯛めしは5000円だと言われます。一方、今から海に出る漁師さんに「500円で鯛を釣ってくるべ」と言われたとします。あなたはどうしますか?
恐らく99%の人は旅館で鯛めしを予約しますよね。よく知らない漁師さんに500円払って賭けてみる強者(脳天気な人)はほとんどいないはずです。
でも、視点を変えると、500円で立派な鯛を2枚、3枚釣って帰るかもしれません。一枚の鯛でも500円の10倍ですから十分価値があります。
教訓は3つあります。
- 準委任契約でのアジャイル開発は勇気がいることを理解する。アジャイル開発は準委任ですと言うことは簡単ですが、お客様にとってはとても勇気と決断がいることです。忍耐強く説明して理解してもらわなくてはなりません。
- サプライヤーはお客様が払った以上の価値を提供するべし。準委任契約なので成果物の納品義務はないと考えてはいけません。成果物でなくても、お客様への成果の提供は必須です。500円でも投資しているわけですから、リターンがゼロでは契約を継続する理由が見当たりません。5000円の立派な鯛でなくとも3000円の鯛でも納めるコミットメントが必要です。
- サプライヤーはできることでごまかさない。実際に釣り始めたら全くあたりがない。鯛が釣れる気がしない。そんな時でも、他の魚を釣ってごまかしてはいけません。確かにアジャイルは不透明な中で使いますが、所詮POCですとか、できる限りのことはしてみましたとは口が裂けても言ってはいけません。そんな開発チームやアジャイルコーチは秒で淘汰されます。お客様がほしい鯛をデリバリするかどうかです。他の成果でごまかしたり、言い訳してはいけません。
少し厳しいことを書いてしまいましたが、このようなプラクティスを止めない限り、お客様はアジャイル開発を準委任契約でやってみようとは思いません。アジャイルでも安心して任せていただくには、お客様にとっての価値を示していくしかありません。それは、お客様の本当の価値を知り、試行錯誤しながらも「お客様の満足」を愚直に追求していくことでしか達成できません。
アジャイル開発ならデフォルトで準委任契約とお客様が考えてくださるよう、私も日々研鑽していきたいと思います。