成果だけでなくプロセスもエンジョイするということ

アジャイル開発では成果を追求します。厳密には、伝統的なウォーターフォール開発プロジェクトでも成果の追求からスタートします。PRINCE2ではプリプロジェクトの段階で、ベネフィットとコストを天秤にかけてビジネスケースの健全性をチェックします。残念ながら、プロジェクト化する段階で成果物を固定し契約を一括請負にするため、ひとたびプロジェクトが始まると成果物に意識がシフトしてしまいます。一括請負契約の締結以降、発注側と受注側のヒエラルキーが生まれ、請け負った方はプロジェクトが終るまで奴隷のような働き方をすることになります。

話を戻しましょう。成果か成果物か、契約は準委任か請負かの話しではありません。今回は、成果を追求しつつそのプロセスも大いに満喫しようという話しです。

私たちは日々仕事をしている訳ですが、単に作業をしている訳ではありません。達成すべきゴールや目的があり、望む成果を実現するために日々邁進しています。そこには、アジャイル、ウォーターフォール、定常業務の区別はありません。成果を望むこと、それはどんな仕事であっても必要です。

それでも、出る成果に差が出るのはなぜでしょうか。

ある人は、多くの成果を出し、ある人はほとんど成果が出せずにいます。

成果への意識の差もあるかもしれませんが、私はそれだけだとは思いません。成果を出す人はほぼ間違いなく、成果に繋がるプロセスも楽しんでいます。

サッカー選手のリオネル・メッシ選手をご存じでしょうか。イタリア系アルゼンチン人のサッカー選手で、スペインリーグのFCバルセロナに所属しています。典型的な10番の選手です。ポジションはフォワードです。サッカー好きの人たちの間では説明不要な存在です。その圧倒的なテクニックに加え、予測不可能な展開力は見る人を魅了してやみません。

メッシ選手を見ていて感じるのは、とにかく本人が楽しんでプレーしていることです。ノリノリでハットトリックを決めることもありますし、劣勢で難しい試合でも、わっと驚くプレーで観客を盛り上げることもあります。でも盛り上げるために無理をしているのではなく、成果(ゴール)に関わらず、創造性を発揮し、一つ一つのプロセスも楽しんで組み立てているように見えます。

成果(ゴール)が必要だからと言って、全てのボールをシュートできる訳ではありません。成果(ゴール)はプロセスの最終結果でしかありません。1から10の内、成果は1でプロセスは9です。成果を意識しすぎると、90%のプロセスが長く辛い時間になってしまいます。

成果は、レベルの差はありますが、だれもが意識します。違いは、成果を意識しすぎるあまり焦ってしまって能力が発揮できない人たちと、成果を置いておいて、組み立てのプロセスの中で自身の強みと創造性を発揮し、楽しみながら過ごせる人たちの差です。

選手の楽しいは、観客にも伝わります。私たちも、ゴールシーンだけでなく、ゲームの組み立てとかその過程も一緒に楽しみたいですよね。

私たちの日々の作業が成果に直結しているか点検することはもちろん大切です。でも、成果だけでなく、プロセスそのものも面白がるといいますか、プロセスの中で遊ぶと言いますか、エンジョイしていくマインドもとっても大切だと思います。成果を見据えつつ、その過程に自分のオリジナルなアイデアを注入したり、関わる人たちにいいインパクトを与えながら、直進ではなくグルグル小さな遊びを織り交ぜながら進めることが、結局成果をだす近道だと思うのです。