PRINCE2 Agile マネジメントステージの考え方

PRINCE2 Agileは、既にプリンスを使ってプロジェクトを運用している英国や欧州系の企業において、アジャイルなデリバリーをしたい場合に採用されています。

プリンスのマネジメントステージについて、PRINCE2 Agileではどのように扱われるのか、以前問い合わせをいただいたので回答します。

まず、マネジメントステージのおさらいです。

マネジメントステージとは、長期のプロジェクトにおいて、プロジェクトボード(プロジェクト委員会)が定期的にプロジェクトの状況をチェックするために、プロジェクトをいくつかのステージに分解し、ステージ毎に評価できるようにした「管理ユニット」のことです

マネジメントステージは、従来型のフェーズ開発における技術ステージとは異なります。プロジェクトボード(プロジェクト委員会)が管理したいタイミングでプロジェクトを分割します。便宜上テクニカルなステージと同期を取ることも多いですが、同じである必要はありません。

伝統的なフェーズ型開発では、プロジェクトの最後にビッグバンリリースすることが多く、プロジェクトを適当な大きさにサイジングすることでリスクを低減し、適切なコントロールを維持します。

一方、PRINCE2 Agileでは、デリバリー手法を反復型の開発にシフトします。イテレーションの度に、レビューを繰り返し、プロダクトインクリメントを増強させていきます。また、インクリメントは最後まで持ち越さず、ビジネスの求めるタイミング(または機能セット)でリリースしていきます。イテレーションイコールリリースであることもあれば、イテレーション中に何度もリリースするケースもあります。

PRINCE2 Agileではリリースは上位の概念になります。前提として、プリンスではソフトウェアだけでなくハードウェアも含めた幅広なプロダクトなので、イテレーションを重ねてある程度の大きさにしてからリリース、またはハードウェアと組み込んだ上でリリースすることになります。

通常、リリース時にはリリース前デモを行い、広くステークホルダーを呼んで、前回リリースからのプロダクト増分を検査します。そのため、これがプロジェクトボード(プロジェクト委員会)のチェックポイントの役割を果たすことになります。

概念としては下の図のようになります。

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結論としては、PRINCE2 Agileでは、マネジメントステージをリリースに追加して使ってもいいし、使わなくてもいいことになります。

一点気になるのはプリンスの原理原則との整合性です。プリンスには7つの原則があり、その全てを使う事が求められています。原理原則はテーラリングの対象にならず、全適用がマストです。

Manage by Stages / 段階によるマネジメント

PRINCE2 Agileのマニュアルには、段階によるマネジメントは必要だが、プロダクトドメインや文脈によってはリリースと読みかえてよいと書かれています。すなわち、実態として同じなら、「段階によるマネジメント」の役割をリリースに含めて構わないということです。