アジャイル開発ではインプロを楽しむ

アジャイル開発はVUCAワールドで使います。すなわち先行きが不透明で、この先どうなるかわからないエクストリームな状況でこそ威力を発揮します。頻繁に「検査」と「適応」を繰り返し状況に応じて軌道修正します。

そんな中、アジャイル開発と称して予定通り進んでいくプロジェクトもあります。6か月のプロジェクトを2週間サイクルに刻み、スプリント毎のバックログアイテムを選び、予定通りに進んでいくプロジェクトです。ストップアンドゴーを繰り返しますが、予定との逸脱はなく極めてスムースに滞りなく進んでいきます。時計の秒針のように精緻に進捗を刻んでいきます。

このようなプロジェクトは管理側からすると非常に信頼できます。そして、私もできるならば望ましいことだと思います。しかし、多くのアジャイル開発はこのように進めることはチャレンジであり、だからこそアジャイルなのです。

アジャイルの醍醐味は、先行き不透明な中、試行錯誤の末今のベストを繰り出しマーケットの反応を見て次の一手に気づくことです。即興のインプロに似ています。インプロ(インプロビゼーション)は楽譜のない中で演奏したり、踊ったり、トークや技を繰り出すことです。インプロ前に、周囲の人たちの雰囲気は一応つかんでいますが、どう反応されるか予測がつきません。ですから、自分たちのベストを尽くして演奏してみるのです。戻ってくるリアクションを見ながら調整していきます。そして最終的には拍手をもらえるといいのです。

どうなるかわらからないドキドキ感とか、その場で即興で作っていくライブ感とか、観客と一緒に探りながら場を盛り上げていくアプローチです。アジャイル開発ならステークホルダーを呼んでデモして、反応を見てみる、違うようであれば、その場でこうなったらどうでしょうと巻き込みその場で作り変えてみる。ステークホルダーも含めてハラハラドキドキしながら合意形成していくのがアジャイル開発の醍醐味だと思います。

ということで、きれいなレビュー会だとかきれいなスプリントを目指すのではなく、カオスな状況を積極的に楽しみ、ドキドキしながらインプロでやってみて、できたものをぶつけてみて、そしてリアクションを踏まえて改良していけばいいのです。

私たちは人間です。人間は不完全なものですから、完璧である必要はないのです。アジャイル開発ではみんなを巻き込んでインプロでいきましょう。