スクラムでは、通称「朝会」と呼ばれる、デイリースクラムを実施する。
デイリースクラムはスクラムの公式イベントである。だから、ルールだ。
スクラムを正しくするなら、朝会はマストだ。
朝会とは、一体なんなのか。
まず、朝会について確認しよう。
2017年11月にアップデートされた最新版スクラムガイド(スクラム公式ガイド)によると、以下のように説明している。
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デイリースクラムとは、開発チームのための 15分間のタイムボックスのイベントである。
スプリントで は、毎日デイリースクラムを開催する。開発チームは、次の 24時間の作業を計画する。
前回のデイリースクラムから行なった作業の検査と今後のスプリント作業の予想をすることで、チームのコラボレーションやパフォーマンスを最適化するのである。
デイリースクラムは毎日、同じ時間・場所で開催し、複雑にならないようにする。
開発チームはデイリースクラムを使って、スプリントゴールとスプリントバックログの進捗を検査する。 デイリースクラムは、開発チームがスプリントゴールを達成する可能性を最適化する。
開発チーム は、自己組織化チームとしてスプリントゴールを達成し、スプリント終了までに期待されるインクリメントを作成できるかを毎日把握しなければいけない。
デイリースクラムの構成は、開発チームが設定する。
スプリントゴールを目指している限り、他のやり方で行なっても構わない。
質問を使うチームもあれば、議論ベースで進めるチームもある。たとえば、以下のような例を使用するといいだろう。
• 開発チームがスプリントゴールを達成するために、私が昨日やったことは何か?
• 開発チームがスプリントゴールを達成するために、私が今日やることは何か?
• 私や開発チームがスプリントゴールを達成する上で、障害となる物を目撃したか?
開発チームやチームメンバーは、デイリースクラムの終了直後に集まり、スプリントの残作業について、詳細な議論・適応・再計画を行うこともある。
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「スプリントゴール」という言葉がたびたび出てくる。併せて引用しておこう。
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スプリントゴールはスプリントの目的の集合であり、プロダクトバックログの実装によって実現するものである。
これは開発チームがインクリメントを構築する理由を知る指針となる。
スプリントゴールは スプリントプランニングで作成する。
スプリントゴールを設定することで、開発チームがスプリント終了までに実装する機能を柔軟にできる。選択したプロダクトバックログアイテムは、一貫性のある機能として届けられる。それがスプリントゴールになることもある。スプリントゴールがあれば、開発チームは一致団結して作業ができる。
開発チームが作業するときには、スプリントゴールを念頭に置く。
スプリントゴールを達成するために、機能や技術を実装する。
開発チームの予想と異なることが判明した場合は、プロダクトオーナーと交渉してスプリントバックログのスコープを調整する。
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「スプリントゴール」はキーワードだ。だから、英語の原文でも載せておく。
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The Sprint Goal is an objective set for the Sprint that can be met through the implementation of Product Backlog.
It provides guidance to the Development Team on why it is building the Increment. It is created during the Sprint Planning meeting.
The Sprint Goal gives the Development Team some flexibility regarding the functionality implemented within the Sprint. The selected Product Backlog items deliver one coherent function, which can be the Sprint Goal. The Sprint Goal can be any other coherence that causes the Development Team to work together rather than on separate initiatives.
As the Development Team works, it keeps the Sprint Goal in mind.
In order to satisfy the Sprint Goal, it implements functionality and technology. If the work turns out to be different than the Development Team expected, they collaborate with the Product Owner to negotiate the scope of Sprint Backlog within the Sprint.
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あなたが理解していた朝会の定義と同じだろうか。
スプリント期間中、1番意識しなくてはならないのは「スプリントゴール」だ。
スプリントプラニングで、スプリントの作業を計画する。
スクラムチーム全員で、今回のスプリントで実装するプロダクトバックログを決める。
次に、開発チームは自己組織化したチームとして、選んだプロダクトバックログの実装戦略を練る。
プロダクトバックログの明確化、開発チームのキャパシティー等を踏まえ、今回のスプリントバックログを最終化する。そして、スプリントゴールを設定する。
スプリントが始まると、開発チームはスプリントゴールの実現に向けて共同する。
そのために必要なのがデイリースクラム、すなわち朝会である。
スプリントゴールは固定だ。
だが、ゴールへ道筋はいくつもある。
開発チームは、スプリントゴール達成に向けて、自己組織化したチームとして、必要な作業を洗い出し、実行に移す。
スプリントバックログは、スプリントゴールを実現する具体的な作業手順書である。
実現すべきはスプリントゴールだ。だから、作業手順書はどんどん書き換えて構わない。
スプリントプラニングで選択したプロダクトバックログも、スプリントゴールの実現に寄与しないものは、外して構わない。機能やテクノロジーを作らずゴールを達成できるなら、プロダクトをシンプルに保つ方がいい。
作業は、柔軟に変更して構わない。
ゴールへの最短ルートを模索し、日々、再計画を繰り返す。
朝会の目的は、24時間サイクルで、開発チームが、スプリントゴールの達成度合いをチェックことだ。
現状を把握し、残り時間を見て、スプリントゴールを達成できるかどうか、開発チーム全員で確認し合う場が朝会である。
朝会はスクラムのルールだが、ルールだからする訳ではない。
スプリントゴールを見据え、現在の状況を検査し、これからどうすべきか、開発チーム全員で話し、作業の同期を取るために行うのである。
朝会3つの質問も、するかしないかは、チームで決めればいい。
最新のスクラムガイドでは、デフォルトの定型質問にこだわらず、開発チームで最適な現状把握の方法を選択するよう説いている。
開発チームのミッション、それはスプリントゴールの達成である。
スプリントゴールを達成するために、何をどんな順番で進めるかは、開発チームに任されている。
朝会は、開発チームがスプリントゴールの達成度をチェックし、今後の計画を見直すために行う。現時点のプロダクトインクリメントを通して現状を把握し、チームが一枚岩となり、コレクティブにコラボレーションするための24時間サイクルのイベントなのだ。
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