プロダクトは様々なフェーズを経て、世に誕生する。
- プロダクトのコンセプトメイキング
- プロダクト開発
- プロダクトマーケティング
- プロダクトリリース
そして最後に、生み出したプロダクトからの資金回収。
製品・サービスによっては、構想中のプロダクトを先行マーケティングして、先に契約を取り付けてからプロダクトを開発するケースもあるだろう。建築予定のマンション販売はこのケースにあたる。
製品・サービスの制作において、アジャイルでデリバリーするなら、利用者が最大の価値を感じる部分からリリースしていく。最小限のプロダクトを速やかにリリースし、フィードバックを得ながら、プロダクトを育てていく。
では顧客が価値を感じるプロダクトを、どう見いだすか?
顧客へのヒアリングだろうか?
だが、残念なことに以下のような事が頻繁に起こるのである。
-
こんな商品があったら欲しい → でも、リリースしてみるとニーズがなかったことが判明
-
こんな商品があったら即買いする → でも、実際には買わない
-
こんな商品があったら使いたい → でも、実施には使わない
顧客が言うこととやることは必ずしも一致しない。それは、顧客が適当な訳ではなく(そういうケースもあるが・・)、顧客も自身のニーズを正確に掴んでいないのである。
顧客価値を当てる精度を高めるため、顧客の言葉ではなく「ふるまい」に焦点を当てる方法もある。顧客の行動を観察するとか、顧客の購買データを取る方法もあるが、それでも確実ではない。
結局、顧客ニーズを100%の精度で吸い上げることは不可能だ。そして、仮に顕在化している顧客ニーズを特定できても、レッドオーシャンなマーケットに参入するのであれば、プロダクトに特別な訴求力がなければ相手にされない。既にマーケットが飽和状態であり、対象とする顧客にはお気に入り製品がある状況では、新しい商品を購入するモチベーションが働かない。消費者として長年愛用しているプロダクトを差し置いて、新しいプロダクトにスイッチする必要性はほとんどないのである。
明らかに顧客ニーズがわかるということは、既にマーケットが確立しており成熟段階に入っていることを意味する。だから、マーケットガリバーが犇めいている状況で、目新しいだけの商品を売り出しても見向きもされないのだ。顧客ニーズを掴んでいることとそのマーケットで売っていけること、利益を確保できることとは別の話なのである。
だから、結論になってしまうが、まだマーケットができあがっていないブルーオーシャンでプロダクトのコンセプトメーキングをしなくてはならないのである。
この段階では顧客が気に入るかどうかも確信がもてない状況だから、小さく始めて、実験しながら検証し、徐々に製品を育てていく戦略を採る。
重要なのは、これから展開していくプロダクトを取り巻くマーケットが未完成であるということでだ。
そしてこの局面で必要なことは、2つある。
-
スケールしながらも製品・サービスの品質を担保できる技術的卓越性
-
新たなマーケットを開拓し、新しい価値を創出するプロモーション戦略
目新しいプロダクトなのだから、まだ作り慣れたサプライヤーは存在しない。安定して生産できるケーパビリティーと品質を維持できる仕組みが必要だ。そして、まだ詳しく知られていないプロダクトだから、使い方を示す広告等のプロモーション活動が不可欠である。
そして最後に重要なのは、投資の回収をプロフィットシェアリングにすることである。
1回打っておしまいのビジネスモデルではなく、継続的に運用・保守できる体制を整え、顧客の使用率に応じて課金・徴収する収益モデルを採用しよう。
プロダクトのライフサイクルは長い。ブルーオーシャンに売り出した製品・サービスは更に開拓されていく。だから、初期の販売価格はぐっと抑え、利用者の使用率に連動した収益モデルを構築しよう。そうすることで、プロダクトを維持する安定した収入が見込める。
最後にポイントを纏めておこう。
-
飽和状態のマーケットは捨てて、成長の見込めるブルーオーシャンをターゲットにする。つまり、誰がみても明らかな、顕在化した顧客ニーズではなく、周辺の成長の見込めそうな顧客ニーズを発掘する
-
小さく始めて、素早くリリースし、マーケット・ターゲット顧客の反応を観察する。フィードバックから学習し、マーケットリーダーとしての地位を固める。小さく始めて大きく育てるアプローチ
-
スケールできる技術的コンペテンシーの確保。顧客に使用方法をわかりやすく示し、価値を感じてもらえるプロモーション活動。新たな価値を創出するアプローチ
-
収益回収は使用量に応じて課金するモデル。お客さまが使えば使うほど収益が増える顧客の価値と同期するビジネスモデル。安定した収益ストリームを確保