プロダクトオーナーと開発チームの関係はロールの違いだけ

スクラムには3つのロールがあります。

  • プロダクトオーナー
  • 開発チーム
  • スクラムマスター

全て重要なロールですが、肝となるのはプロダクトオーナーと開発チームです。いい製品・サービスにはプロダクトオーナーと開発チームの良好な関係が不可欠です。そのため、この二つのロールが効果的に機能するように心を砕き支援するのがスクラムマスターです。

プロダクトオーナーは何を作るかを決めます。そして、開発チームはどう作るかを決めます。作り方を決めるのは開発チームですから、スプリントでどれだけ作れるかを決めるのも開発チームになります。そして、この二つのロールに上下関係はありません。単にロールが異なるだけです。

優れた製品・サービスには、魅力的な機能が必要です。そして、優れた品質も必要です。たとえ優れたコンテンツであっても、たまにしか使えない状態だったり、不具合が多かったり、なかなか復旧しないものは売れません。クオリティーを作るのは開発チームです。プロダクトオーナーと開発チームは飛行機の両翼です。どちらを欠いてもうまく飛べません。

よくあるケースとして、プロダクトオーナーは部長レベル、開発チームはスタッフレベルというチームがあります。これはあくまで組織上の役割であって、スクラムでは関係ありません。モノ作りにおいて、ヒエラルキーがあると健全なプロダクトはできません。上下関係は障害でしかありません。安心安全な品質を生み出す為に、開発者は必要な事を伝えなくてはなりませんし、プロダクトオーナーは開発者の意見に耳を貸さなくてはなりません。役職が事業部長だとか組織の権限をスクラム開発に持ち込んではいけないのです。

トヨタのチーフエンジニア(主査)制度では、プロダクトで1番偉いのはチーフエンジニアです。チーフエンジニアは担当するプロダクトの社長です。なので、上位の役員でもそのプロダクトに関わることは命令できません。プロダクト責任者にそれだけの権限を与えることは素晴らしいことですが、その圧倒的な権限のあまり開発部隊が自由にモノを言えない光景もよく見かけます。そして、このような状況では両者のバランスを取るスクラムマスターの役割がとても重要になります。

組織デザイン上、プロダクトオーナーとスクラムマスターは上司部下の関係でないことが好ましいです。スクラムマスターがプロダクトオーナーの部下の場合、スクラムマスターはプロジェクトマネージャーに変身しがちです。そして、PMとして開発チームに命令し始めます。開発チームは作業工程のみならず納期までコントロールされ、完成の定義は破たんします。結果、品質は不安定になり、スクラムチームはやがてプロジェクトチームになります。

組織構造はロールのふるまいに影響を与えます。アジャイルやスクラムの価値基準を説くだけでなく、そのようなふるまいが強化されるような環境構築が重要になります。