クライアントから、「この案件は急ぎなので、従来通り進めます」と言われることがある。
従来通りとは、ウォーターフォール開発のことだ。
そしてマネジメントがトップダウンで管理して進めると言うことである。
彼らの言い分はこうだ。
急ぎだから、チームに任せて、チームが試行錯誤しながら、学びながら進めていく余裕がない。
我々マネジメントが指揮を執り、速やかに進めていきます。一日も無駄にできません。
マネジメントが言わんとしていることは、なんとなくわかる。
だが、残念ながらこの考え方は間違っている。
マネジメントの占める割合は組織の2割、せいぜい3割だ。少数派のマネジメントが懸命になっても、大半の現場が受け身では、事は思い通りに進まない。
人事権のあるマネジメントの指示だから、現場は一応作業するが、やらされ感満載だし、ものづくりに魂がこもらないから、やっつけ仕事になる。悪く言うと仕事をしているフリだ。
遠回りと思うかもしれないが、現場に任せ、現場主導で仕事してもらうのがベストだ。
組織の80%を構成するのは現場である。
現場がやる気をもって、顧客価値を意識してモノをつくれば鬼に金棒だ。マネジメントによる「やらされる仕事」から脱却して、当事者として「主体的に取り組む仕事」に転化すれば、生産性は倍増する。
生産性に影響を与える2大パラメーターは、能力とモチベーションである。
そして、振れ幅が大きいのは、モチベーションだ。
能力はそう簡単に増減しない。モチベーションは日々カンタンに増減する。
現場のモチベーションを上げるには、現場を信頼して任せることだ。
「君、これを頼む」
「進め方は、君に任せる」
大いにやる気が出る言葉ではないか。
「君、これを頼む」
「やり方は全て私が指示する。従うように。決して、勝手に進めてはならん」
テンションだだ下がりだ。。
能力開発はもちろん重要だが、チームのモチベーションを上げることを意識しよう。
モチベーションがチームのパフォーマンスを左右する。
現場は顧客に一番近い。そして顧客と直接インターフェースを持っているから、顧客のニーズやペインポイントも心得ている。だから、顧客の求めるものを細部までブレずに作り込める。正に、痒いところに手が届く製品・サービスである。
アジャイルなら早い段階でプロトタイプがあがってくる。実際に動くものを見ながら進捗を確認できるからマネジメントも安心だ。
それでも不安なら、現場のタスクボードやバーンダウンチャートを見ればいい。
現場に行けば、ダイナミックな作業の動きを体感できるし、非公式に、動く実機をデモしてもらってもいい。
公式なレビュー会だけでも、早い段階でモノがあがってくる。
だから、マネジメントも動くプロダクトを直接触って、現地現物に基づくリアルなフィードバックも出せる。
早い段階から、利害関係者のフィードバックを取り込み、繰り返し作り込んでいくから、プロダクトは自ずと高品質になる。
具体的なモノをみて話ができるから、チームもマネジメントも、嬉しいし、安心である。
急ぎの案件ほど、アジャイルがはまる。
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