プロジェクトマネージャーのキャリアパスについて考えてみたい。
組織によってPMの所属先は様々だろう。
- PMO
- IT
- 業務管理本部
- トランスフォーメーション
- チェンジマネジメント
- 社長室
ビジネスドメインに所属するケースもあるだろう。
- 営業
- マーケティング
- 商品
- 財務
- 業務
- 法務
- 総務
- 人事
置かれた状況が様々だから、ひとまとめにPMのキャリアパスについて話すのは無理な部分もあるが、なんらかの参考になることを期待して続けよう。
私が考えるに、PMのキャリアパスは、以下の5パターンある。
- PM → プログラムマネージャー → ポートフォリオマネージャー → PMOヘッド
- PM → プログラムマネージャー → ビジネスラインマネージャー → 部長
- PM → プログラムマネージャー
- PM → 独立コンサルタント
- PM → PMO事務局長
順番にみていこう。
PM → プログラムマネージャー → ポートフォリオマネージャー → PMOヘッド
これは王道の流れだろう。
プロジェクトマネージャーとして経験を積めば、次はプログラムマネージャだろう。
プログラムなら、スコープは増えるし、期間も長くなるし、予算も大きくなる。そして、複雑さも増す。
プログラムには、大抵、複数のプロジェクトと通常業務が含まれる。だから、各イニシアチブの依存関係に注意しながら、的確な段取りと実行が求められる。
PMにとって、プログラムマネージャーになることは一つのマイルストーンだ。
そして、プログラムマネージャーも上手く進められれば、部長や役員クラスからもいろいろ頼まれるようになる。
より広い視野で全体最適を求められるようになると、手持ちのプログラムだけでは局所最適でしかないと気付く。
次は、ポートフォリオマネージャー、またはすっ飛ばしてPMOヘッドという流れだ。
組織内のすべてのイニシアチブについて、全体最適を任される立場である。大変やりがいのある仕事だ。
では、二つ目のパターン。
PM → プログラムマネージャー → ビジネスラインマネージャー → 部長
こちらは、特定のビジネスドメインを突き詰めていったキャリアパスである。
例えば、PMとして財務のプロジェクトばかり任されたとする。最初の流れは同じである。
財務のPMから財務のプログラムマネージャーに昇格する。
そのうち、財務の知識もついて、財務に興味も出て、財務のことは大抵わかるようになる。そうなると財務の管理者から重宝がられて、財務関連のイニシアチブにいつも指名されるようになる。
そのうち、引っ張られて、財務のラインマネージャーに転籍するバターンである。
そこでも、更に専門知識を蓄積して、ビジネスドメインの全体像がわかるようになると、部長とか、特定ドメインの企画部長に昇格する。
今後は安定した業務は自動化されるだろうから、新たな仕組みをカタチにできる人材は重宝されるだろう。
次の3つ目と4つ目のパターンは類似だ。
違いは、前者は社内、後者は社外である。
まず、3つ目のパターンから説明しよう。
PM → プログラムマネージャー
このシナリオは、PMがプレイヤーとして長くプロジェクトに関わりたいケースのキャリアパスである。
PMとして実力が認められれば、自然とシニアPMとかプログラムマネージャーに昇格するだろう。
自分自身でプログラムを管理しつつ、傘下のPM達にアドバイスしたり支援したりする役割ももつ。組織にとって重要なプログラムを自分の裁量で動かせることが大きなモチベーションだ。
現場の熱気と空気が大好きな人のキャリアパスである。
3つ目の派生版とも言える4つ目。
PM → 独立コンサルタント
こちらは、現場に身を置いていたいという意味では同じだが、組織を飛び出して、外の世界で自分の力を試したいとか、固定の組織を超えて、広い世界で人の為に自分の力を役立てたいと思う人のキャリアパスだ。
独立するパターン以外に、国際的なコンサルティングファームや世界規模の企画系の企業への転職も考えられる。世界は広いのだから、いろいろな会社で経験を積みたいという人のキャリアパスだ。
最後に5つ目のパターン。
PM → PMO事務局長
予算承認等、プロジェクトガバナンスの機能である。
プロジェクトは投資だから、承認が必要だ。
プロジェクトゲートの承認にあたり、あらゆる情報や資料が必要になる。プロジェクトフェーズ毎の資料準備や段取りをPMO事務局が行う。
新米PMにはプロジェクトガバナンスの研修もあるし、あらゆる指導が必要になる。
そういった、時にPMに煙たがられることもあるが、組織には必須の役割がPMO事務局である。
そして、その事務局長が5つ目のキャリアパスだ。
組織によっては、PMOヘッドが兼務しているケースもあるが、PMO事務局長のファンクションがあれば、これを目指すのもひとつのキャリアパスである。
以上が私自身の経験、および周囲で目にしたキャリアパスの代表的なパターンである。
変化の激しい世の中だから、今後は変わっていくかもしれない。
それに、ハイブリッド型で、1や2のパターンから独立開業のケースもある。
Cピープルになっても、早期退職して開業された先輩もいる。
最終的には、どのような役割で仕事と関わり、自己実現していきたいかだろう。
5つのパターンを踏まえながらも、自分自身の組織を観察して、よりよいキャリアを築いてほしい。
最後に、社長になりたいケース。
「PMは社長になれないのか?」と聞かれた事があるが、私が知る限りPMが社長になったケースは知らない。
CIO, CTO, PMOヘッドが一般的だ。
だからといって、無理なことはないだろう。この世は常に「初めて」で溢れている。
「初」のケースが何人も登場して、当たり前になるのだから。
社長になりたいのなら、パターン2が一番確率は高いだろう。
パターン2はPMとしての素養に加え、ドメインの専門家になるキャリアである。このドメインが営業や財務であれば可能性はある。
まずは営業の常務・専務とか、財務最高責任者を目指すことになるが、営業、財務、商品、法務・コンプライアンスのトップが社長になるケースはよくあることだ。
ドメイン・エキスパートでありながら、更に、実装のアプローチにも詳しいなら鬼に金棒だ。