アジャイルでも計画は立てる。
計画書は目的地への地図だから、開発手法に関わらず作る。
アジャイルでは、具体的なタスク出しは、スプリント毎の計画会議で行う。
従来型開発のように、プロジェクトのスタート時に、全てのタスクを洗い出し、豪華なガントチャートを作ることはしない。
アジャイルで作るのは、リリース計画書だ。
マイルストーン・チャートと考えてもいい。
いつ、どのような機能(顧客価値)を届けるか、ハイレベルな計画書を作る。
このリリース計画を軸に、スプリント単位で、これから取りかかるスプリントの計画会議を実施し、具体的なタスクを洗い出す。
スプリント計画会議の終わりには、見積られたタスク一覧とその実装戦略ができあがっている。
作業ボードとバーンダウンチャートを用意して、いよいよ作業開始である。
アジャイルでは、タイムボックス毎に実績がわかる。
予定に対して、実際どこまでできたかを集計する。その結果を踏まえて、リリース計画を更新する。
いわゆる、予実管理である。ギャップが大きいと、リリース計画の振れ幅も大きくなる。
計画書の精度が酷いと、やがて誰も信じなくなる。ただの絵に描いた餅である。
信頼されるリリース計画を立てるには、どうしたらいいのか?
アジャイルは、計画駆動型開発ではないから、計画を立ててもムダなのか?
アジャイルは、従来型に比べて、遙かに精度の高い計画が立てられる。
ただし、3ヶ月後に、である。。。
説明しよう。
アジャイルは経験主義だ。
全てが経験することから始まる。経験を得て、学び、賢くなる。
だから、プロダクトを立ち上げて、チームを立ち上げたら、早速スプリントを開始する。
スプリントを数本回してみて、初めてチームの生産性がわかる。3~6本スプリントを回せば、チームのベロシティーが安定してくる。一つのスプリントで、チームがどれくらいの作業を完了できるか予測がたつ。
リリース計画も洗練化していく。
リリース計画は実績を基に行う。
チームの現状を基準に予測するのだ。
スプリントを重ねると、上手くいけば、チームの総合力もアップする。
振り返りを実施して、改善効果もでてくれば、チームは自然と加速する。
次第に、成長トレンドも見えてくる。
だが、リリース計画は、あくまで現時点のチーム力で判断する(「昨日の天気」を見て判断)。
改善効果やチームの成長性を見込んだ、希望的観測ではない。
最新のスプリントで完了できた量で見積る。
今の力を基準に見積る。
アジャイルは現実主義である。
リリース計画が、希望的観測であってはならない。
希望と現実は、違う。
希望したことと実際が違うことは日常茶飯事である。
ダーツは、いつも外れる。ブルを狙って投げているにも関わらず。。
自分の描く軌道と実際の軌道は、見事に違うのだ。
プロのサッカー選手でも、ボールが狙った通りゴール枠に行かないことも多い。
1994年のアメリカ・ワールドカップ。
ブラジル対イタリアの決勝戦を覚えているだろうか。
延長戦でも決着がつかず、ワールドカップ初の決勝でのPK戦。
神がかっていた、あのロベルト・バッジョですら、枠外に大きく蹴り上げてしまう。。
メジャーリーグの一流バッターでも、当っても3割である。
希望と現実は、常に違う。
経験を踏まえて、チーム・スピードを測り、現時点のチーム力を踏まえて、計画を立てる。
だから、アジャイルのリリース計画は精度が高くなる。
いくつかスプリントを回して、その実績を基準に、今後の作業を見積り、リリース計画を立てる。
実際のテーマ(プロダクト)で、実際に作業するチームを基準に計画を立てるから、見積り精度は自ずと高くなる。
従来のウォーターフォールでは、類似プロジェクトを探して、コンテキストも、体制も、人員も異なる状況で、「えいや!」と見積り、計画書を作っていた。
そして、その計画を信じて、計画駆動型開発を行っていた。。
アジャイルでも、最初に大枠でリリース計画は作るが、実行してみてから、実際のチームスピードを踏まえて、本当の計画をつくる。
ウォーターフォールとは真逆のアプローチである。
だから、アジャイルで確かなリリース計画が立つのは3ヶ月後だ。
アジャイルは経験主義であり、現実主義である。
経験から学び、現実から予測する。
スプリントを回す度に、リリース計画の精度は高まっていく。
アジャイルであっても、やがて、計画を確かな精度で実現していけるのである。
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