スクラムの基本単位は「スプリント」だ。
スプリントは1ヶ月以内のタイムボックスイベントで、通常、1週間~4週間の週単位で運営される。
スプリントの中に、スクラムの4つの公式イベントが含まれる。
- スプリントプランニング
- デイリースクラム
- スプリントレビュー
- スプリントレトロスペクティブ(ふりかえり)
今回は「デイリースクラム」に焦点をあててみてみよう。
デイリースクラムは、通常「朝会」と言われる15分のタイムボックスイベントである。開発チームのためのミーティングだ(スクラムマスターとプロダクトオーナーの参加は任意だが、朝会が効果的にできていない場合は、スクラムマスターがファシリテートする)。
有名な3つの質問で、作業の進み具合を確認する。
- 昨日したこと
- 今日すること
- 困っていること(チームに助けて欲しいこと)
デイリースクラムは、チームエリアで自分たちのタスクカンバンやバーンダウンチャートを見ながら行う。
デイリースクラムは、最新の状況を基に、自分たちの作業の進み具合を検査し、その日の作業を最適化(適応)するイベントである。だから、タスクカンバンとバーンチャートは朝会が始まる前に最新化しておこう。
バーンダウンを使うか使わないかはチームの判断だが、自分たちの作業の進み具合がひと目で確認できる便利なツールだ。
縦軸が残作業時間、横軸が日数である。総作業時間の合計からスタートし、時間経過と共に、作業が進み、残作業が減っていく(はずだ)から、右肩下がりになる。目安を「理想線」として表わす(上の図のケースでは青線)。実際の残作業(時間)が理想線より上なら遅れている、下なら進んでいる。
毎朝、朝会の前に最新のタスクカンバンから、残作業を集計し、バーンダウンチャートを更新する。バーンダウンから、以下のことがわかる。
- チーム全体の作業の進み具合(順調なのか、遅れているのか)
- シュミレートして間に合いそうかどうかの判断
- 間に合いそうもないなら、下位のバックログ項目を捨てるのかPOのトレードオフ判断を促す
デイリースクラムは開発チームが自分たちの状況の「透明性」を高め、制作中のインクリメントの仕上がり具合を「検査」し「適応」するイベントだ。だから、デイリースクラムでしっかり再計画できれていれば、成果ゼロでPOにショックを与えたり、スプリントのレビュー会でステークホルダーを失望させたりすることがなくなる。
朝会は毎日開催され時間も短いが、とても重要なイベントなのである。朝会が機能しないと、スクラムの他のイベントが意味のないものになってしまう。
最後に、バーンダウンチャートのあるあるを3つ書いておこう。
- スプリント初期に実線がアップする
- スプリント中程に実線が平行になる、またはダウン率がスローになる
- スプリント終盤に急降下してなんとか終える
理由はいろいろ考えられるが、代表的なものをいくつか。
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スプリント初期に実線がアップする
作業してみたら、タスクの抜け漏れに気づき、追加タスクが発生するパターン。スクラム初期のチームには多いパターンだ。スプリント初期ならしっかり再計画することで挽回可能だ。スプリントプランニングで具体的な設計とタスク分解を入念にすることで改善できる。
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スプリント中程に実線が平行になる、またはスローダウンする
1本目2本目のバックログに比べて、後続のバックログの準備ができていない(Readyでない)ことが考えられる。曖昧なまま着手したため、途中で依存関係が出てきたり、実装内容をPOと握り直さなくてはならなくなるケースも。スプリントプランニングで選んだバックログ項目について、もれなくReadyクライテリア(Readyの定義)を満たしているようにしよう。また、割り込み等による影響がないかどうかもチェックしよう。
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スプリント終盤に急降下してなんとか終える
後半追い込み型で、残業したり週末作業してなんとかやり遂げるケース。自分たちのキャパシティ、ベロシティ、昨日の天気を踏まえてスプリントプランニングをしているかチェックする。組織的にスコープ全量デリバリーの圧力が強いと、チームが目に見えない作業をスキップすることに繋がる。リファクタリングやテストをすっ飛ばして品質をおろそかにしたり、完成の定義を満たしていないコードを結合するケースなど。
毎回のバーンダウンで特徴的なパターンがあれば、スクラムマスターはふりかえりで開発チームに改善を促そう。
持続可能なペースで、確実に品質をつくり込んでいかないとコードは突然死したり、ある日とんでもない化け物になったりする。
デイリースクラムで、タスクカンバンとバーンダウンチャートを活用して、毎日、規則正しく、正しい作業を積み上げていこう。24時間サイクルで状況を点検し、自分たちの作業を再計画し、ヘルシーなスプリントの過ごした方を心がけよう。
スクラムの基本はこの一冊。お薦めです。
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