「価値のある」ソフトウェアを早く継続的に提供します

「アジャイル宣言の背後にある原則」のひとつ目に来ているのはこれです。

顧客満足を最優先し、価値のあるソフトウェアを早く継続的に提供します。

アジャイル宣言の背後にある原則

アジャイルやスクラムを実践しているチームであれば、何度も目にしているはずですが、後半部分だけになっているチームを見かけます。それは「ソフトウェアを早く継続的に提供します」だけが実践されているケースです。

重要なポイントは前半です。顧客価値を最優先し、顧客にとって価値が認められなくてはならないのです。そうでなくては、ごみの大量生産になってしまいます。

では「顧客にとっての価値」とはなんでしょうか。

それは顧客が望む目的を達成できることです。顧客はなにもソフトウェアを欲しているわけではありません。ドリルを買いに来た客が欲しいのは穴であるとは有名な話ですが、それと同じことです。顧客は必要な大きさの穴を作るためにドリルを買いに来ているのです。穴が欲しいのであって、ドリルが欲しい訳ではないのです。

車を買いに来たお客様に、どのモデルがいいですかと聞いてはいけません。車を使って、何を達成したいのかその目的を聞かなくてはなりません。移動が目的だとしたら、子供の習い事の送り迎えなのか、週末のレジャーなのか、経営者を乗せて取引先に移動するためなのか、その目的を明確にしなくてはなりません。そして、子供の習い事だとしたら、お子さんは何歳なのか、どんな習い事なのか、お友達も一緒に乗るのか、どれくらい頻繁に乗るのか、どれくらいの距離を走るのか、道の広さはどうなのか細かな情報を拾っていきます。

中には車自体が目的の人もいます。フェラーリの具体的なモデルやグレードが決まっているケースです。フェラーリオーナーとなって運転すること自体が目的のケースです。その際も、フェラーリでの運転体験をマックスにするため、詳細情報をヒアリングしていきます。晴れた日しか運転しないのか。オープンエアーをダイレクトに感じたいのか。ひとりなのかパートナーと一緒なのか。スピードなのか、エンジンサウンドなのか、ラグジュアリーな空間なのか、定量的なスペックなのか。目立ちたいのか目立ちたくないのか。鮮やかなフェラーリロッソなのか、力を秘めたマットブラックなのか、イタリアンなモデナイエローなのか。ホイールデザインやサイズも満足度に影響を与えます。

ポイントは、顧客が満たしてほしい目的からはじめることです。その目的が満たされることに価値があります。いきなりモノからはじめてはいけません。そして、達成したい目的を掴まぬまま作りはじめてはいけません。

アジャイルであることは、顧客の「価値のある」目的を掴んでから、早く継続的に提供していくことなのです。