プロダクトデリバリーにおいて、常に資源は限られています。
財務的・時間的制約の中で、顧客に届ける価値を最大化するには、ムダなものを削ぎ落とし、シビアな優先順位付けをしていかなくてはなりません。
SAFe(Scaled Agile framework)では、遅延コストに基づくWSJFという方法を使ってエピックやストーリーを優先順位付けします(SAFeでは要求のことを”フィーチャー”と言います)。
遅延コスト(Cost of Delay)はしばしば略してCoDと言われ、以下の数式で算出できます。
遅延コスト(CoD)=ビジネス価値+時間的厳しさ+リスク軽減・機会創出
「遅延コスト」はその名の通り、デリバリーを遅らせたが為に、損するコスト(実現できなかった価値)のことです。
エピックやストーリーは顧客に使ってもらって始めてバリューがでます。仮に、あるフィーチャーを使ってもらうことで毎月300万円の価値がでるとすると、そのリリースを3ヶ月遅らせることで生じる損失は900万円(300万円x3ヶ月)になります。
遅延コストが大きければ大きいほど損失も膨らみますから、素早くリリースする方が好ましいでしょう。
先の数式に戻りましょう。
遅延コスト(CoD)=ビジネス価値+時間的厳しさ+リスク軽減・機会創出
遅延コストには、3つの要素があります。
- ビジネス価値: ビジネス、顧客、利用者の視点から見た価値。価値が高ければ大きくなります
- 時間的厳しさ: 顧客・マーケットに展開するリリース期限のシビアさ。クリスマス商品なら、クリスマスまでにリリースしなくては意味がありません。リリースタイミングの制約が厳しいものは数字が大きくなります
- リスク軽減・機会創出: 実装することで将来的なリスクを軽減したり、機会を創出する場合、このポイントが大きくなります。
これら3つの要素を数字で表わします。フィボナッチ数列を使う事が多いですが、1・3・5でも、倍数で1・2・4・8でも構いません。
そしてそれらを合計した数値が遅延コストになります。
SAFeのベストプラクティスであるWSJF(重み付けされた最短の作業から着手)はこの遅延コストを実装にかかる期間(工数)で割ったものです。
WSJF = 遅延コスト/実装期間
この方式で得られた数値が大きいものから実装することで、遅延コストを最小限にできます。最も効率よく価値を届けることができます。
BV | TC | RR/OE | COD | Time | WSJF | Priority | |
Feature A | 8 | 2 | 3 | 13 | 5 | 2.6 | 3 |
Feature B | 5 | 3 | 5 | 13 | 3 | 4.3 | 2 |
Feature C | 8 | 5 | 2 | 15 | 3 | 5.0 | 1 |
- BV: ビジネス価値(Business Value)
- TC: 時間的厳しさ(Time Criticality)
- RR/OE:リスク削減・機会創出(Risk Reduction/Opportunity Enablement)
- WSJF: 重み付けされた最短のバックログから着手(Weighted Shorted Job First)
このケースでは、Cのフィーチャー(エピック・ストーリー)から取りかかることになります。
遅延コストを踏まえてのバックログ項目の優先順位付け、是非お試しあれ!