プロダクトの多品種化小ロット化が進む ベントレーに見るプロダクト戦略

Blue Bentley Continental Gt Close Photography

ベントレーのベンテイガをご存じだろうか。
英語名 Bentaygaである。

ベントレーは言わずと知れた英国の高級スポーツカーメーカーだ。1919年設立だからおよそ100年の歴史がある。現在はフォルクスワーゲングループの傘下にある。

ベンテイガはベントレー初のSUV(Sport Utility Vehicle)だ。
全長は5メートルを超え、車幅もほぼ2メートル(199センチ)、車高も175センチだから山のような車である。
車重も2.5トンあるからそれを引っ張るエンジンも巨大だ。6リッターW型12気筒ツインターボエンジンである。
0→100㎞/時加速は4.1秒。最高速度は301㎞/時に達する。この巨体で4.1秒とは驚異的だ。

高速道路で、リアミラー越しに、この山のようなベンテイガがずんずん近づいてきたら、誰もが道を譲るのではないだろうか。
実際、2016年の販売時点では世界最速のSUVであった。
(ポルシェのカイエンターボSも0→100㎞加速は同じく4.1秒だが、こちらの最高速は286㎞/時だ。)

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ベンテイガの堂々たる肢体に、伝統ある英国のクラフトマンシップによる内装、世界最速のパフォーマンス。正に、世界一のSUVである。

そして、クルマ好きであれば、ご存じの方も多いと思うが、ランボルギーニー社からウルス(Urus)が2018年に販売開始した。

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ランボルギーニ社によると、ウルスは普通のSUVと一線を画した、スーパーなSUVであるとして、SSUV(Super SUV)というカテゴリーを新たに設けてマーケティングしている。

スペックはベンテイガをも凌駕する。
4リッター、V8ツインターボエンジン
0→100㎞加速: 3.6秒
最高速度: 305㎞/時

3,000万円近い価格帯も同じだ。

更に、電気自動車というカテゴリーになるが、テスラ社のモデルXの加速も凄まじい。

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ガソリン車ではないのでエンジン音は一切なし。
それでいて最上級モデルなら0→100㎞加速は圧巻の3.1秒である。テスラ車お決まりのワープ感が愉しめる。
こちらの最高速は250㎞/時である。

ここまで読み進めて感じた方もいると思うが、ベンテイガの圧倒的なプレミアム感がやや薄らいでしまった。
SUVのトップオブワールドに乗りたいという層もいるから、そういう人はガソリン車ならウルス、未来の電気自動車ならテスラ・モデルXに流れる顧客もいるのではないか。

そんな中、ベンテイガの8気筒モデルが2018年に販売される。
排気量もダウンサイズして4リッターV8モデルだから、スペックはやや落ちる。
0→100㎞加速: 4.5秒
最高速度: 290㎞/時

だが、内装のブリティッシュクラフトマンシップはそのまんまだし、なんと価格は2,000万円を下回る。

パフォーマンスが劣ると言っても、最高速度が301㎞から290㎞になることは、日本の顧客にはほとんど影響しないだろう。
高速道路は制限速度100㎞だし、国産車のリミッターは180㎞である。ドイツ御三家のパフォーマンスカーでも250㎞でリミッターが介入する。

SUVだからサーキット走行はしないだろうが、仮にしても、ライバルのポルシェ・カイエンターボSでも最高速は286㎞である。

ベンテイガのディチューン版は、プロダクト・ラインアップの正常進化であろう。
世界最速のSUVでない今、3,000万円近くの価格帯はゴージャス過ぎるかもしれない。
スペックを若干落としても、魅力的なプライシングにすることで、新たな顧客を開拓できるのではないか。3割引なら、ベントレーの世界観を味わってみたい潜在顧客はかなりいるはずだ。

同様の流れはメルセデスにも見られる。
ノーマルモデルとAMGモデルの中間を埋めるモデルが売れている。
例えば、Cクラス。c200とc63の間は広すぎた。c200では物足りないが、c63はツーマッチな顧客がBMW335等に流れていた。今はc43があるから、メルセデスでもパワフルな6気筒エンジンが愉しめる。

更に、近年のハードコアなユーザー向けに、63Sとか、ターボSとか、パフォーマンスモデルの更に上をいく最上級モデルも増えてきている。

工業製品も、テクノロジーの進化や電気などの新しいソリューションによって、ハイスペックなものがどんどん増えている。そうすると、標準モデルとの乖離がどんどん大きくなる。結果、その間を埋める品種が必要になる。
同時に、価格よりも、世界最高の性能や品質を求める顧客もいるから、そうしたニーズを満たす超エクスクルーシブな製品やサービスも増えている。

ノーマル、ノーマル+アルファのプレミアム版、パフォーマンスモデルのディチューン版、パフォーマンスモデル、超パフォーマンスモデル等、今後、プロダクトは更に多品種化していくだろう。

顧客ニーズの多様化に合わせて、製品サービスの多品種小ロット生産化が進むだろう。

プロダクトマネジメントの要諦は、世界の動向を見据え、継続的にプロダクトラインアップを見直していくことである。そのために、外的環境の変化や顧客のニーズを素早く獲得し、速やかにプロダクトにフィードバックしていく仕組みが必要である。

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