プロダクトの「アイデア」から「カタチ」になるまでを、価値の視点で見た場合、仕掛品に価値はない。
価値があるのは完成品だけだ。
仕掛品とは、なんらかの作業が発生していることを意味する。
資金であれ、時間であれ、既に投下されているのだ。それでいて顧客にとっての価値はゼロだから、1番無駄な状態である。
だから、作業を開始したら速やかに完成品にもっていく。「アイデア」から「カタチ」までのリードタイムを最短にする。
イメージは、ゴングが鳴ったら、いかに速く仕留めるか。
顧客価値を最短で創造することがミッションだ。
プロダクト開発において、仕掛品であるWIP(Work in Progress)状態は1番ムダな常態である。だから、チケットをとったら、速やかに完成品に持って行く。
「アイデア」を「カタチ」にする期間は、短ければ短いほどいい。
4週間より3週間。
3週間より2週間。
2週間より1週間のスプリントだ。
1週間スプリントなら、一つのバックログ項目は通常2~3日で完成するから、仕掛品ステータスも2~3日になる。
変化の激しい世の中である。作業中に、もし緊急停止命令が出ても、短いサイクルで回していると強い。
4週間スプリントで2週目にストップされると、多くが仕掛状態だ。顧客視点で見たときの価値はゼロ。
もし1週間スプリントで回していたら、2スプリント分のインクリメントが完成している。開発チームのアウトプットを、価値ある製品として顧客に届けることができる。ムダを最小にできる。
スプリント期間を短縮するには、いくつか方法がある。
1.作業単位(バックログ項目)を小さくする 大きい物は時間がかかるし、複雑になる。
2.開発チームのベロシティの向上 チームの総合力がアップすれば、短い期間で多くの作業がこなせる。(チーム力が上がると、相対的に作業の難易度は下がるので、ベロシティは中長期的にはなだらかに下がり安定する。ここでは、単純に初期のチーム力が上がれば、それだけ多くの作業をこなすことができるということ)
3.仕掛り制限を設ける カンバンの概念と同じだが、仕掛り状態で滞留させないために、仕掛りカラム毎の最大キャップを決めておく。上限に達したら、一つ完成品にもっていくまで次のバックログを取らない。これは、メンバーのスキルセットにバラツキがある場合に発生することが多い。人は自分の馴染みのある作業をしてしまう傾向にあるから、仕掛制限を設けることで、中途半端な作業を制限し、1つずつ完成に持っていく。
4.バックログ間の依存関係を排除 作業開始前なら、個々を独立したバックログにする。途中で依存関係が生じたら、統合して同じ人がつくる。調整に時間を要するなら、パーキングロットに移動して、仕掛品カラムから外す。
5.マネジメントやプロダクトオーナーによる即断即決 作業の滞留は、開発チームが自ら打開できないときに起こる。スプリント計画に影響を与えるような課題が顕在化したら、マネジメントに即決してもらう(組織的なプロセスのボトルネックであることが多い)。マネジメントに即決してもらうには、常日頃から作業の進捗具合を見える化して、作業状況の透明性を高める工夫が必要だ。状況がわからないと、最初からゼロベースで話さなくてはならず、またたく間に2~3日過ぎてしまう。そうなると短期のスプリントはおぼつかない。
あなたがスクラムマスターなら、チームボードのWIPカラムは狭くしよう。
物理的に狭いと、速くDoneに持って行く意識が働く。
大きな冷蔵庫もあっという間にいっぱいになる。「パーキンソンの法則」を思いだそう。
ゴングが鳴ったら秒殺だ。
チケットが仕掛りカラムに入ったら、次の瞬間、Doneに移動できるのが最もリーンで美しい。
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