メルセデス・ベンツのゲレンデヴァーゲンをご存じだろうか。
もともとNATOの軍用車両であったが、民間車として1979年にデビューした。
ゲレンデヴァーゲンの頭文字を取って、「Gクラス」と呼ばれている。
クルマに詳しくない人でも、ジープみたいなベンツと言えば、わかってもらえるだろうか。
(厳密には、ジープはフィアット・クライスラー・オートモービルズのアメ車を指し、ゲレンデヴァーゲンはジープではない。アメ車のジープと言えば、ジープ・ラングラーだろう。)
そんなGクラスが、新しくなって2018年に発表された。
G63
駆動方式:四輪駆動
V型8気筒ツインターボ
トランスミッション:9速AT
585馬力
850Nmトルク
0-100加速 4.5秒
最高速度220㎞(AMGパッケージを追加購入すると240㎞までアップ)
排気量:3,982cc
全長:4,873
全幅:1,984
全高:1,966
20インチ10スポークアルミホイール
IWCアナログ時計
ステアリングは左右選べる。車幅が2メートル近いから、迷うところだろう。
ぱっと見、「何が変わった?」と思った人も多いだろう。
それぐらい変わっていない。
なぜか?
それは、変えてはいけないからだ。
変えたら、ゲレンデの輝きを失ってしまう。Gクラスの魅力が半減してしまう。
圧倒的なキープコンセプトである。
ゲレンデの魅力はなにか?
第一に、唯一無二なスタイリングが挙げられる。
この、四角い、角ばったスタリングが最高にイケている。
スーツにアタッシュケースでも様になるし、軍パンにティアドロップのサングラスでも決まる。
第二に、マルチなシーンで使い倒せる、卓越したパフォーマンスである。
速いだけなら、マクラーレン、フェラーリ、同じメルセデスならAMG GTSなんかもある。だが、ゲレンデはシーンを選ばないパイオニア・オートモービルなのだ。
海、山、川、湖、砂漠、なんでもござれである。
ジェットコースターが通るような勾配から、水深70センチの川まで、走破性は抜群だ。
あらゆる悪路を走破できるパフォーマンス。
ゲレンデヴァーゲンの鍵を手にしたら、陸路を制圧したも同然である(と思えるクルマなのである)。ゲレンデなら、いつでも、どこでも、どこまでもいける。
第三に、安心感絶大なハンドリングと取り回し。
外から見るとカクカクしていて運転しにくそうに見えるが、よい意味で期待を裏切る運転しやすさである。
アイポイントが高いから、遠くまで見渡せる。頭一つ抜けているから、気分がいい。渋滞時も道路状況が手に取るようにわかるからストレスフリーである。
四角いことが、返って、四隅をつかみやすく、車幅が直感的にわかる。
だから、混み合う都内でゲレンデを運転している女性は多い。ハンドルの重さに慣れれば非常に扱いやすいクルマだ。
他にも、カギが掛かる時の、半端ない金属ガチャン音とか、低く吠える8気筒エンジン音とか、フツウの乗用車では味わえないガジェットがてんこ盛りなのである。
エクステリアは、従来のクラシックコンセプトを継承しつつ、インテリアは超ハイテクだ。
オフロードの走破性向上に加え、オンロードのパフォーマンス、そして居住性と快適性が飛躍的にアップしている。
実際には、ボディーも少し大型化している。全体に、いくらか丸いフォルムになっているが、普通に見ただけではわからない、すさまじいまでのキープコンセプトぶりを貫いている。
変化の絶えない世の中である。
だから、変化を取り込み、プロダクトを継続的に進化させていく。
ダイナミックにプロダクトを変えていく。
だが、絶対に変えていけないものがある。
そう、プロダクトには変えていい部分(変えるべき部分)と、変えてはいけない部分があるのだ。
- 会社のビジョン
- 会社のクレド(信条)
むやみに変えると強みを失う。
軸がぶれてしまう。
変えるものと、変えてはいかんものを見極める。
プロダクトのイノベーションは、必ずしもカタチの変化であるとは限らない。
プロダクトの思想、哲学、コンセプトは不変だ。
内面を磨き抜きながら、外観はそのまんま。
粋ではないか。
ゲレンデヴァーゲンのキープコンセプト、変化が常の世の中で、変わらない最新がある。